第103話
暗闇が包み込む海にやってきた。
聞えるのは波の打ち寄せる音と、風。
琥珀と2人なら、こんな寂しい場所も暖かくなれるんだと、初めて知った。
「夜の海も、綺麗だね。」
脱いだ靴を両手に持って、砂浜を歩く琥珀がそう言った。
その言葉に海に視線を移せば、揺れる水面が月の光を反射してキラキラと光り輝いていた。
映り込むそれはHalfmoon
まるでそこにあるかのように、水面に映し出されていた。
「うん、すごく綺麗だね。」
「半月って神秘的だよね?綺麗に光り輝く部分と、闇に侵食された部分が均等に寄り添ってるから。」
そう言って振り返った琥珀は、どこか儚げに見えた。
「ホント、神秘的だね。」
本当にそう思った。
光と闇を両立する月。
半分しかない様に見えるけど、本当は反対側の黒い部分にも、ちゃんと月は存在してる。
ただ、光が当たらないだけ。
「闇と光はいつも背中合わせでだよ。だから、無理に光になろうとする必要はないよ。」
琥珀の言いたい事がよく分からなかった。
「・・・・・。」
首を傾げてみる俺に琥珀はさらに言葉を続ける。
「だからね、ズルくったっていい。人って闇と光の両方を持ってるんだから。ナナが心を痛める事なんて何もないよ。私は・・・ナナを選んだ、ただそれだけだから。」
真っ直ぐに俺を見つめる瞳。
琥珀の言葉に、心が震えた。
俺が心の中で、ずっと罪悪感に苛まれていたのを、見透かされているような気がした。
琥珀のくれた言葉は、今一番欲しい言葉だった。
リク兄への負い目と、本当にこのまま琥珀を自分の傍に置いていいのかと、心のどこかで葛藤していた俺にとって、一番欲しい言葉だった。
「琥珀。」
そっと近寄ってその小さな体を抱き寄せた。
「ナナ・・・一緒に生きて?」
小さくて少し聞き取りにくい言葉だったけど、しっかりと俺の心に届いたよ。
「あぁ、これからは一緒に生きよう。」
そう言った途端、不覚にも涙が零れた。
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