第50話

「・・・・・・でどう言う事だ?」






翡翠の低い声。





腰に両手を当てて仁王立ちする翡翠の前には、なぜか正座させられてる琥珀と六織と元就の姿。







スーツ姿のひー君、般若の様なお顔をしていてその筋の人に見えてしかたない。








「・・・・・こんな大事な話に、俺抜きってどうなんだ?」





完璧に怒ってらっしゃる。







ひー君が相良家にやってきてから、かれこれ15分程経つが、未だこの状態。









さすがに足が痺れてきた。








「琥珀は・・・もういい。そこ座れ!」




翡翠が指差すのは、リビングのソファー。







「えっ?でも・・・。」




隣の六織を不安げに見る。





自分だけ解放されるのはなんか違う気がして。







「良いからソファーに座れ。冷えたら腹に悪いだろ?」




そんな優しい言葉を掛けてくれた六織。





琥珀を心配してる事が伝わってきて、





「う・・・うん。」



と、素直に頷いた。








琥珀は少し離れてソファーに腰を降ろすと、翡翠を見る。







どうか、リクもお父さんも許してあげて!の意味を込めて。










「なぁ?六織、お前自分のしでかした事の大きさ分かってんのか?」





こ・・・怖いよ、ひー君。







「はい。」




真っ直ぐに翡翠を見る六織の瞳には、覚悟が込められてる。






この人には殴られる覚悟で居た。





妊娠を聞いた時、一番に頭に浮かんだのは親父さんでもなく、この人だった。






琥珀を溺愛するこの人は、一筋縄ではいかない事は覚悟の上だ。









「俺の大事な琥珀を、傷物にしたんだ。それ相応の覚悟がねぇとな?」




・・・・傷物ってなによ?




ひー君、勘弁してよ。





お父さん、ひー君止めてよ!




と視線を向けたら、元就は六織の隣で小さくなってた。







これじゃ、どっちが父親か分からないじゃん。







何とも言えない溜息が出た。










「なんか、大変な事になったね?」




琥珀の隣に座りながらそう言ったマリは、どこか楽しげで。






「ま・・・マリさ~ん、何とかしてよぉ。」



と涙目で琥珀が腕に縋り付いた。

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