第43話
昨日の夜、六織に言われたように父親の空き時間を確認するために、実家に連絡を入れた琥珀。
その時は特に緊張した感じでもなかった。
「お父さん、琥珀。」
『おお、久しぶりだな?元気だったか?』
「うん、元気だったよ。お父さんも元気?」
『体だけは昔から丈夫だからな?』
「そうだね。マリさんとはラブラブしてる?」
『・・・ん・・・ゴホッ・・ま、それなりにな?』
少し照れたような父、元就の声に、笑みが漏れた。
「良かった。お父さんの傍にマリさんが居てくれたら安心だよ。」
『あぁ、マリさんは良くやってくれるよ。それより、お前から電話なんて珍しいな?』
元就の声のトーンが少し下がった気がした。
「うん、聞きたい事があって。」
『聞きたい事?どうかしたのか?』
「あ・・・うん、大した事じゃないんだけどね?リクがね、父さんの都合の良い日を聞いて欲しいって。」
『・・・・・・。』
少しの沈黙と、緊張が電話越しに伝わって来た。
『そ・・・そうか・・・。明日の夕方は家に居る。』
静かにそう言った元就。
「あ・・・うん、分かった。そう伝えるね?」
琥珀まで緊張してしまう。
『あぁ、待ってるよ。2人で来るのを。』
何かを含んだような重い言葉に、
「うん、待っててね。2人で行くから。」
そう伝えて電話を切った。
早速、六織に元就の都合を伝えると今日の事が決まった。
で・・・・・今、この襖の前に居る。
ゴクリっと唾を飲み込んで六織を見上げる。
六織は琥珀を見ると。フッと口元を緩めてから、大丈夫だ!とでもいう様に琥珀の頭を優しく撫ぜた。
「失礼します、六織です。」
そう言うと、
「入りなさい。」
と声が聞こえる。
「はい。」
そう言って六織はゆっくりと襖を開けた。
静まり返った床の間に、真っ白な胴着の身を包んだ父親の姿があった。
この格好が格闘家である父親の正装。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます