第41話

次の日、父親の予定が開いていることが判明して、2人で相良邸を訪ねる事にした。








年季の入った門を車でくぐると、敷地内に車を止めた。




「降りるの少し待てよ?」



と言ってきた六織。




「あ・・・うん。」




意味も分からず頷いた琥珀。







六織は運転席から降りると、助手席までやってきてドアを開けた。







「足元、気をつけろよ?」





そう言いながら優しく手を差し伸べてくれた。






「う・・・うん。」



戸惑いながらもその手を取った。






ゆっくりと足を出して車から降りる。







六織は、後部座席に置いてあった相良邸への手土産を取り出すと、開いてる手を琥珀の腰に手を回して抱き寄せる。






「行くか?」





と言われたけど、





ちょっとこの体制は恥ずかしいんですけど?








車を止めた所から、玄関まではそんなに距離もないし、実家の敷地内でその体制で歩くのはどうかと・・・思います。







しかも、歩きにくいのよ!






「出来れば、1人で歩きたい感じです。」



と言ったのに、




「足元不安定だから、転んだら危ねぇだろうが!」


と睨まれた。






イヤイヤ・・・・そんな簡単に転びませんって!






確かに、敷地は敷石が敷き詰められて、不安定な感じもするけど、転ばないってば!





それにさ、お腹出てる訳でもないので、身軽だしね?









「大丈夫だよぉ~大げさすぎるよ。」



と笑い飛ばしたのに、




「念には念だ!」




と低い声で言われた。








「・・・・・。」






今頃からこんなだと、先が思いやられるのは・・・私だけか?






はぁ・・・と気づかれない様に溜息を付いた。







六織が琥珀を離してくれる事もなく、結局玄関までやって来た。








唯一の救いは、門下生やご近所さんにその姿を見られなかった事だ。











【ピンポーン】




とインターフォンを押すと、扉の向こうで、




「は~い!」



と陽気な声と【バタバタバタ】と言う足音が聞こえてきた。








ゆっくり扉を開けると、笑顔のマリさんがパタパタとスリッパを鳴らしながら駆けてくるのが見えた。

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