第38話

大学卒業まであと半年、リクとお腹の子供と頑張って行きたいと思った。








自分の夢だって、捨てるつもりはない。






リクと離れて、辛くて寂しい思いをした4年間に、私が見つけた希望。








今まで、何度もお世話になった病院や看護師さんを見て、今度は自分が人を応援できる側になりたいと思った。








この夢は簡単に諦めたりしない。






リクの言う様に、時間がかかっても必ず夢を叶えて見せる。









「リクで良かった。」




涙で潤んだ瞳で、六織を見つめれば、





「お前には俺以外とかありえねぇだろ?」



と自信満々に言われた。






この男の、自信はどっから湧いてくるのだろうか?






「・・・うぷっ・・・。」




込み上げたムカつきに両手で口元を押さえれば、





「おい!大丈夫か?琥珀しっかりしろ!病院に行くか?あ!・・・動けねぇなら、総司呼ぶか!」




テンパった様子で、琥珀を揺さぶってから、大慌てで携帯を取り出す六織。






イヤイヤ・・・・そんなに揺さぶられたら・・・もっと吐きそうになるし。






「だ・・・大丈夫だから。総司君に電話しなくていいよ?」




ムカつきに涙目になりながらも、冷静な視線を送る琥珀であった。








「本当に大丈夫なのか?」




だから・・・体を揺さぶるな!





「・・・うん、すぐ収まるから・・・・体を揺さぶらないで。」




これだけは伝えたかった。









「あ・・・悪い。」





青ざめた顔の琥珀を見て、六織は慌てて揺さぶるのを止めた。







いつも冷静な六織が、悪阻ぐらいでこんな風になるなんて、少し面白かった。









「俺・・・どうすりゃいい?」




心配そうに顔を覗き込まれる。





病気でもないのに、こんなに心配させるのは本当に心が痛い。






「傍に・・・傍に居てくれるだけでいいの。」




安心させるようにニッコリ笑う。






「本当に?それだけか?」




驚いたように目を見開く六織。

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