第37話
あの日、リクに妊娠を伝えた日。
神埼家は歓喜とざわめきに包まれた。
「よかったね?」
と優しく微笑むのはやっぱり七瀬。
「しっかりしなさいよ!」
と六織の肩をバシッと叩くのは皐月。
「ホントにおめでたいです。」
と涙を浮かべたのは東上。
あちらこちらから、組員達の祝福する声が飛び交った。
六織は終始照れくさそうに笑うだけ。
琥珀はハニカミながらも、幸せな気分を満喫した。
「明日、親父さん所に行く。都合を聞いておいてくれ。」
マンションに帰る早々、六織はネクタイを外しながらそう言った。
「あ・・・うん。」
琥珀はソファーに腰を降ろすと、六織を見上げた。
「それから・・・。これからは無理すんなよ?大学を止めろなんて言わない。体の支障にならない程度頑張ればいい。もし、今年卒業できなくても、出産してから目指せばいい。」
六織は琥珀の隣に座って、琥珀の手を握った。
「・・・リク・・・。」
「お前ばっかりに負担を掛けちまうけど。協力できることは何でもする。学生のお前が妊娠するって事は、大変だし、覚悟もいる事だと分かってる。それでも、せっかく宿った命を降ろすなんて事は出来ねぇし。したくない。」
漆黒の瞳に囚われる。
「妊娠も、出産も女の方に大きな負担が来るもんだと思う。それでも、俺は産んで欲しい。でも、お前には夢も諦めて欲しくねぇ。だから、2人で探していこう。どうする事がお前とこいつに最善なのかを。」
大きな手で、まだ膨れてもいないお腹に優しく触れた。
「うん・・・うん。」
琥珀は六織の手にそっと自分の手を重ねて、何度も頷いた。
自然と流れる涙を、六織がもう片方の指で拭ってくれる。
この人となら、乗り越えて行ける。
きっと考えてる以上に大変な事だと思うけど、頑張って行ける。
「泣くな。お前が泣くと、どうしていいか分からなくなる。」
戸惑った様子の六織を見て、可愛いと思ったのは内緒。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます