第33話

琥珀と総司は絶対に、先生に向いてない。





あの非情なやり方は、きっと生徒を委縮させる。







でも、2人のお蔭で試験に合格して、今ここにいる事が出来てる。






だから・・・あいつらには感謝してもしきれない。













「・・・か・・・加藤君。」



その声に顔を向けた。




「ああ゛?」




「睨まないでよ。授業終わったって教えてあげただけなのに。」



ムスッとむくれた顔をする女。






どうやら俺が、昔話を思い出してる間に授業は終わっていたらしい。







「うぉ!やべぇ!」



ノートを見て、半分以上を書き移していない事に気づく。






今日の教授は授業が終わるとそそくさと黒板を消しちまうことで有名な人。






急いで視線を向けた黒板は案の定、三分の二が消えていた。






「待ってくれ!」




泰雅の叫び虚しく、教授は黒板消しを動かす。






はぁ・・・と溜息を洩らした時、横からの視線に気づいた。






「・・・なんだてめぇ!」





威嚇する泰雅に、





「なんだじゃないし。人が親切に教えてあげたのに、お礼も無い訳?」





黒髪のショートボブの女は綺麗な顔を歪めて、腰に手を当てたまま泰雅を睨みつける。






クリンとした瞳、泰雅が凄んでも動じない性格。






背が高い女だけど、どっかあいつに似てると思った。








「チッ・・・助かった。」


と言えば、



「舌打ちしてお礼とかありえない。」



と俺を睨む。






そんな仕草まで琥珀にそっくりな気がして、思わず表情が緩みそうになる。






それを我慢して、ムスッとした表情をしてると、



「男前でも性格悪いと嫌われるよ?はいこれ、貸したげる。次の講義に返してくれればいいわ。」




女は泰雅の目の前の机に、一冊のノートを置くと颯爽と去って行った。






目が点になる泰雅。




「あっ!・・・おい!」




泰雅が我に返って声を掛けた時には、女は教室の外に出て行った後で・・・。






机に置かれたノートには、綺麗な字で大垣結依(オオガキユイ)と書かれていた。






なんだ・・・・変な女。






泰雅の第一印象はそれだった。






不思議と今まで女達とは違い、嫌悪感は生まれてこなかった。

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