第32話
きっと琥珀の所にも、七瀬の噂は流れてる。
進路で悩んでるなんて言ってたけど、こいつが悩んでるのは、きっと七瀬の事。
自分が離れたせいで、荒れてる七瀬に心を痛めてるんだと思う。
「なぁ、俺は、お前の決断間違ってねぇと思う。」
琥珀の目を見ずに話し続ける。
「だからよ?さっきも言ったみたいに、お前は自分意志を通せ!」
「泰雅・・・・。」
琥珀の瞳は見る見るうちに潤みだす。
「俺もお前に言われたことで、前に進む決意付いたから。お前も今まで通り前に進んでけ!大丈夫、あいつもきっと進んでいける。だから、もう悩んで迷うなよ?お前の下した決断は間違ってねぇよ。」
今日一番の優しい泰雅の顔に、琥珀の瞳からほろりと涙が零れた。
「泰雅を励ますつもりが、泰雅に励まされた。」
無理して笑った琥珀が愛おしく思えた。
「いや、励まされた。お前のお蔭で自分の道を見つけれそうだしな?」
「法学部受けるの?」
「あぁ、やれるだけやってみようかと思う。何の目標もなかった俺に、親父が進めてくれたチャンスだしな?やってみてダメなら、新しい道を見つけりゃいいしな?」
そう言った泰雅の顔は晴れ晴れとしていた。
「うん、人間死ぬ気になれば何とかなるよ。これからみっちり、一日八時間ぐらい勉強すれば。」
「ま・・・マジか?そこまでやらなきゃ無理か?」
焦った顔の泰雅に、
「当たり前じゃん。法学部なんてとんでもない偏差値いるよ?」
「・・・やめ・・。」
やめるか?と言おうとしたら、
「一緒に勉強頑張ろうね。私も全面的に協力するよ。」
と有無を言わせない雰囲気で、ごり押しされた。
・・・・俺、間違った奴に相談したかも?
泰雅が青ざめたのは言うまでもない。
それからは地獄の日々だった。
親父は言った通りに資料と受験対策用の塾を用意してくれた。
琥珀は毎日の様に俺の勉強に付き合ってくれて、気が付いたら総司までもがスパルタ先生として参加していた。
俺は翌年のセンター試験と私立受験まで、死に物狂いで勉強した・・・いやさせられた。
あの地獄の日々を思い出すと、今でも寒気がする。
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