第26話

俯いていた泰雅の頭に、コツンと何かが当たった。



「泰雅の癖に、何を難しい顔してるの?はい、これあげる。」




顔を上げると、琥珀がニッコリ笑って棒付きのキャンディーを差し出した。






「・・・俺は、蘭丸じゃねぇよ。」



「だって、口が寂しそうに思えたもん。」



「煙草吸う。」



とポケットから煙草の箱を取り出せば。







「ここは禁煙です。」



と、取り上げられた。








「・・んだよ。うぜぇ。」




眉を寄せれば、




「小さな子が居る側ではダメ。」



睨んでも怖くない瞳が俺を見据えた。









「・・・・場所変えるか?」




溜息を吐き出しながらそう言えば、




「うん、久々にデートしちゃう?」



と、可愛く首を傾げて笑った。






お前とデートなんてした覚えはねぇよ!





ま・・・たまに独り占めも悪くねぇな?



自然と口角が上がる。






「おう、行くぞ。」



泰雅が立ち上がれば、琥珀もそれに続く様に立ち上がる。




「うん、行く。」





2人で並んで歩くと、明るい公園を出た。








琥珀に会えた事で、何かが変わる予感がしていた。













「これ被れ。」


ヘルメットを手渡すと、




「泰雅は?」



と聞いてくる。






「今日は一個しかねぇ。」



「えっ?じゃあ。泰雅が・・・。」




ブツブツ言いはじめた琥珀に無理やりヘルメットを被せると、脇に手を入れて抱き上げタンデムに乗せた。





「ブーブー言ってんな。行くぞ、しっかり掴まれよ。」


泰雅は自分もバイク跨がると、振り向いてそう言った。






琥珀の手が自分の腰にしっかりと巻き付いた事を確認すると、ゆっくりとバイクを発信させた。






銀狼の倉庫では、琥珀とはいつもふざけあってたけど、バイクの後ろに乗せるのも、抱き上げたりするのも初めてだった。








・・・・・なんだこれ、ドキドキし過ぎなんだよ、俺。





自分の反応に驚きながらも、アクセルを回しつづけた。

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