第23話
父親の居なくなった応接室は、シーンと静まった。
「・・・チッ・・。」
泰雅の舌打ちだけが響く。
「あ~わかんねぇよ、俺にどうしろってんだよ。」
クシャクシャと少し伸び放題の髪を掻き混ぜた。
父親の事務所を出て、来た時と同じ様にバイクに跨がった。
モヤモヤした気持ちを吹き飛ばすのに、少しスピードを上げて街を流した。
俺はどこに向かえばいいんだろうか?
普段なら直ぐ晴れる気持ちが、どんなに飛ばしても晴れてくれる事はなかった。
気がつけば、あの公園に来ていて・・・。
俺達がガキだった頃、良く溜まった公園。
柊馬と出会ったのもこの場所。
あの頃の俺達はがむしゃらにその時を生きていた。
泰雅はバイクを公園の入口に停めると、ゆっくりと足を踏み入れた。
今では、綺麗に整備されてて、俺達みたいな悪ガキが集まる場所じゃなくなっていた。
小さな子供と、それを見守る母親達。
明らかに場違いなのは俺で・・・・踵を返そうとした時、不意に一カ所が目に入った。
「・・・・ん・・・っ・・・こはく?」
公園の端の小さなベンチに、小さな女が1人座っていた。
見慣れた長い髪と、愛らしい横顔。
見間違うはずはない。
久々に見る琥珀は少し痩せているような気がした。
「・・・何やってんだ?あんな所で。」
そう呟くと泰雅は気付かれ無いようにゆっくりと足を進めた。
昼間の公園は、子供達の楽しそうに騒ぐ声と、草木のざわめく音が自棄に耳についた。
琥珀の見つめる視線の先には、3人の子供達の姿。
何もする訳でもなく、ただ見つめてるだけだった。
泰雅が近付いた事にも気付かない琥珀。
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