第15話
はっ?相槌程度にしてくれるんじゃないのか?
一瞬ギョッとしたモノの、仕事だと引き締めた顔に戻す。
「はい、翡翠さん。改めて自己紹介させて頂きます。一条棗でございます。相良翡翠さんと先日婚約いたしました。今後も秘書としての仕事も続けて参りますので、ご指導ご鞭撻お願いいたします。」
そう言って綺麗に微笑むと頭を下げた。
「・・・・っ・・。」
悔しげに顔を歪めた牧村と、誇らしげに棗を見据える翡翠。
「そう言う事ですので、今後も変わらぬご贔屓をお願いいたします。」
有無を言わせない翡翠の表情。
「え・・・ええ、もちろんよ。」
牧村はそう言うしかなかった。
その後は、食前酒が運ばれて来て、料理が順番にやって来た。
デザートを食べ終えた後、棗の取り出した契約書類で新しい契約を交わして、牧村とは別れた。
最後まで物凄い目つきで睨まれていた棗。
なんだか、自分が不敏に思えたのであった。
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