第11話
しばらくして約束のウィンスタンホテルに到着する。
前橋さんの、
「到着しました。」
の声に、
「ああ。」
と返事した翡翠。
いつ起きたのよ!とツッコミそうになった棗だか、敢えて堪えた。
前橋さんがドアを開けると、
「行くぞ。」
翡翠と言って棗の手を引いて車を降りる。
「は・・はい。」
引っ張られるので必然的に同時に降りるハメになった。
「早くしろ。」
腕を突き出した翡翠。
「・・・・。」
これは腕を回せって事ですかい?
いつもは秘書らしく、パリッとしたスーツを着込み、翡翠の三歩後ろを歩く棗。
どうやら、今日は横を歩かなきゃいけないらしい。
怪訝そうに眉を寄せて見上げてると、
「チッ・・・早く腕を掴め。」
怒られた。
そんな理不尽な。
なんの打ち合わせもないままに、着替えさせられた上に、この仕打ちはなんなんだ。
再び浮上したのは怒り。
「わかりました。」
刺々しく言うと、少し遠慮がちに翡翠の腕に手を回した。
「しっかりくっついてろよ。」
翡翠は自分の腕に回ってる棗の手にそっと手を添えると歩き出した。
「・・・はい。」
返事をしながら棗も足を動かす。
ぎこちない動きをする棗に、
「今日はお前は俺のフィアンセだ。胸を張ってしっかり歩け。フィアンセなら、食事会に同席しても怪しまれないからな?」
と、ここで自分の計画を話した。
「はっ?」
マヌケもマヌケ、棗はポカンと口開いたまま目を見開いた。
今日一の変顔だったと思う。
驚き過ぎて、魂抜けたし。
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