第4話

「チッ・・・。」



こいつ舌打ちしたな?




翡翠の少し後ろを颯爽と歩きながら、手帳をパタンと閉じた。





不服そうな顔で、翡翠を睨みつけながら。






オイオイ・・・俺は社長で、お前は秘書だろ?







棗はボソリッと呟いた。




「・・・琥珀ちゃんに報告だわ。」





はっ?こいつ、また琥珀にチクるつもりか?






棗は俺が仕事で手を抜いたり、サボったりしたらすぐに琥珀にチクリやがる。







・・・・で、琥珀からお叱りの電話を受けるんだ。





『棗ちゃんを困らせるなら、ひー君と口を聞かないから。』




そう、いつも棗を擁護する琥珀。









「あ~、分かった分かった。スケジュール聞きゃいいんだろう?」




翡翠はクシャリと前髪をかきあげると降参ポーズを取った。







「初めから、素直に聞いてください。」




冷たい言い草。







ホント、冷酷女!







心の中で悪態をつく。









「どう思って頂いても構いません。仕事さえこなして頂ければ。」



と、言った棗に、ギョッと驚きの表情を浮かべる。






こいつ、エスパーかよ!と思う。









「では、社長室でご説明します。」




翡翠より一足先に社長室前に行くと、ドアを開けて丁寧にお辞儀した。






それは部屋に入れの合図。









「分かった。じゃ、その前に珈琲を頼むよ。」




翡翠はそう告げて社長室に足を踏み入れた。








ドアが閉まる直前、




「かしこまりました。」



棗の声がドアの向こうから聞こえた。

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