第12話

ただ、ふとした拍子に…



指先に触れた髪の感触を思い出しては、

あの時に見た彼女の顔が、まぶたの裏に浮かび上がってきた。




事情を知った今なら、あの時の彼女の怯えて涙を流す理由がわかるのに。






「………」



本気で守ってやりたいと

あの時の気持ちは一瞬で心に焼き付いてしまった。



出来ることなら、俺が守ってやりたかった。




彼女が俺の隣にいることを選んでくれることが、それが一番の願いだったはずなのに。

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