第8話

小さく息を吐いて、頭の中を空っぽにする努力をした。



翔先輩は俺の隣まで来ると、さっきまで俺が寄りかかっていた壁に同じように背中をもたれさせ、そのままズルズルと地べたにしゃがみ込んだ。




そんな格好ばっかしてっから


いつもチンピラに間違われるんじゃねぇか。




とは、口が裂けても言えねぇ。




「なんかありました?」



「へ?」



「いや、いつも下まで来ないじゃないですか、用もなく」




5階建のこのビルは、1階と2階を組員が待機する場所に使っていたりする。



勿論、組に入ったばっかの俺も違わず。



だが、翔先輩は一応、若頭の盾として武闘派の組員をまとめている立場で、外に喧嘩に行っている時以外は、

ほとんどを上で過ごしていた。




「なんだよ、オレが用もなくカワイイ後輩の顔を見に来ちゃいけないって?」



俺は冷めきった目で翔先輩を見下ろした。




そんなキャラじゃないでしょうよ、アンタは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る