ひらひら

 蝶が飛ぶ様子を、ひらひら、と名付けたのは誰なのだろう。

 そんな意味の無い疑問が浮かぶ。

 はらはらでもなく、ふわふわでもなく、なぜか蝶が飛んでいる姿を連想させる言葉は「ひらひら」だ。

 さて、ひらひらと言えば、服にも用いられる言葉であるが。

 洋服の「ひらひら」と、蝶の「ひらひら」では、意味合いが全く異なってくる。

 服のひらひらは、生地の具合を表しているのだ。

 思えば日本語には、こういった同音異義語が数多く存在している。

 場合によっては、発音の違いさえもほぼ無い物も。

 ならば日本人は一体、どうやって同音異義語を使い分けて区分しているのだろうか。

 私は、言葉の前後にその力があると考えている。

 会話や文脈を通して、日本人は言葉の意味合いを選択しているのだ。

 ここで、私が急に「どかん」と発言したとしよう。

 すると周囲の者達は、ぽかん、とする事だろうと思う。

 どかん。

 これも同音異義語が存在しているだろう。

 土管、ドカン。

 異なる意味だ。

 それをこの因数分解の授業中の教室で私が叫べば、周囲の者達はさぞ滑稽な顔を浮かべてくれるに違いない。

 まあ、そんな無意味な事は、私は当然行動に移したりしないのだが。

 数学の授業はいつも退屈だ。

 退屈しのぎに、私はこんな無意味な思考を繰り返す。

 ああ、なんという事だろう。

 時間はまだ四十分も余っている。

 私は、静かに盛大に、あくびをして見せてやった。

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眠れない日に寄る羽虫の如く 天風いのり @Inori-Aamakaze

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