二股

「もう、この部屋で1人で沙彩の帰りを待っているの、辛いんだ」


「…」


「言葉が悪いけど、俺は二股をかけられてるみたいだろ?」


「…っ」



二股…



「嘘とは言え、沙彩は高森と結婚するんだ。他の男が用意したマンションでヒモみたいな生活は嫌だ」


「…ヒモ…?」


「こんな答えになって、ごめん。独りぼっちにさせて、…ごめん」


「…」


「じゃ…」



 俯いて、隆至の顔を見れなかった。

 好きすぎて別れたくないって言ってくれたのに、“ 二股 ” と “ ヒモ ” なんて表現…

 その言葉がショックだった。


 でも、そうだね。

 二股みたいだよね。


 けど私は本当に隆至が好きだった。

 痴漢から助けてくれる男らしさも、わがままを受け入れてくれた心の広さも。

 隆至が、大好きだった。

 交差点で腕を組んで歩く隆至を見てから、どこかでこうなる事は予想していたんだと思う。

 

 玄関で隆至が靴を履き始めた。

 ダッと駆け寄って、隆至の服を掴む。



「今日、街で見かけたの。隆至が女の人と歩いてるところ」


「…」


「隆至は私に別れを言ってから、その人と付き合うの?」


「…、うん。ごめん」


「私の方が隆至に誠実じゃなかったね。ごめんね? 嫌な事に付き合わせて」


「沙彩…」


「バイバイ。大好きだった」


「俺も…。じゃ」



 、って…。

 私を捨てていくなら、最後にそんな事言わないでよ。

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