突然の花束

「え、っと…」



 毎回、高森は言葉が少なすぎて困る。

 手元を見ながら俯いていた私の視界に、色鮮やかな花が目に飛び込んできたんだ。

 その花を手に持つ高森は、少し柔らかな表情で「どうぞ」とまた口にして。



「花、ですか?」


「はい。今日は急に呼び出してしまったので、そのお礼に」


「あの…」


「はい、なんでしょう」



 ブーケ状に作られた花束は、可愛らしいピンクや赤のガーベラと薄い紫色のトルコギキョウで出来ている。

 花束なんて差し出されたのはいつぶりだろうか。

 成人のお祝いが催された席で、ピアノを披露した時以来、か…?

 思わずドキッとするのを戒め、スッと掌を高森に見せるようにその行動を制した。



「私なんかより、彼女に差し上げた方が良いんじゃないですか?」


「気にしないでください。これは、水川さんに差し上げます」



 迷いなく言い切ってからグッと私に花束を近付けた高森は、私が手を出さない限り引きそうにもない様子だ。

 高森はお礼ってだけで、それ以外の感情は込められているはずがないし、花に罪はない。



「…」



 一瞬躊躇したけど、「ありがとう、ございます」と口にする。

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