困惑

「水川さん? どうか、した?」



 高森が提案したばかりのタメ口を使っている。

 一馬さん達ではなく、女性相手だとぎこちなくなってしまうのだろう。

 それに対して返事をしてあげたいけど、私の体がカタカタと小刻みに震え出す。

 これは怒りなのか、恐怖なのか。

 ただただ、視線が 目の前を歩いて行く2人に集中して思考が停止していた。



「あ…、あの…」


「え? あ、寒い? 震えてるけど」


「…っ」



 さっきのは、間違いなく隆至だった。

 今朝持って出たバッグも同じ物。

 あれは、私がプレゼントしたものだ。

 間違いない。


 でも、一緒にいたあの女性は…、誰?



「水川さん?」


「…っ」



 ハッとなった私は、人混みに消えた隆至の姿を探した。

 高森の車は高級車。

 嫌でも人の目を引いてしまう。

 助手席に座る私がそんな不振な動きをすれば、車に注目していた人は更に怪訝な視線で見てくる。

 これでは高森に迷惑がかかる。



「ここで、降ります」


「え?」


「送らなくて大丈夫です」


「ちょっと待って? どうしたんですか急に」


「…」



 どうしたの?と聞かれて、今見た事を話せるわけがない。

 “ 彼氏が他の女性と仲良さそうに、腕を組みながら歩いてました ” ――なんて…。

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