優しい言葉

「…」



 出なくても、それが誰だか予想がついてしまった。

 土曜日の朝にかけてくる人なんてあの人以外誰もいないんだから。



「はい、もしもし。水川です」


《 水川さん、おはようございます。今よろしいですか? 》



 あぁ。

 朝から良い低さで声を出してくるな。

 早朝の耳にはとても優しい声量だ。



「もしかして、誰かから呼び出しがありましたか?」


《 え? 何故分かったんですか? 》



 いや、逆にそれしかないのでは?

 高森も彼女と予定があっただろうに、誘いは断れないんだね。

 私と隆至みたいな喧嘩、しないのかな…。



「なんとなく、ですけどね」


《 勘が鋭いですね。さすがです 》



 またそうやってすぐ褒める。

 本当、いちいちツボを押さえてくるな。

 隆至とのやり取りで気分が落ちていた所為か、高森の天然の発言と言うか、優しい言葉をかけられた事に、少しだけ嬉しくなる。



「何時までに準備すれば間に合いますか?」


《 大丈夫なんですか? 》


「えぇ。予定…、ありませんし。高森さんも彼女との予定があったはずでしょう?なのにそちらを優先するなら、私も行かないといけないですよね?」


《 そうしてくれると、ありがたいです 》



 返事の言葉遣いが丁寧すぎて、こちらが恐縮してしまう。

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