第39話 いつも通り君はいない その五

 納得のいかないまま、電話を切った。

 ガッコは、如何しているのだろうか?

 最後の電話の時には、もう一人だったのだろうに。

 俺を求めてはくれなかった。

 ガッコに言われたのは!

「でも、直ぐにじゃなくて良い、私だけを見つめて、気兼ねなく会えると思ったら、連絡してね」

 これ、だけだ。

 拓磨との事を、ガッコが拓磨を選んだ事実を受け入れることはできた。その上で、ガッコだけを見つめられるのか?拓磨との口づけを見せつけられ!

 その上で、ガッコの上に俺が上書きすれば!

 拓磨との事は消えて無くなるのか?

 そんな訳ないことぐらい、巣穴に閉じ籠って震えていた俺にも分かる。

 大体が、ガッコがそれを望むのか?

 今の俺には、どれもが信じられない。

 又、俺が動き出すのを見て、誰かが罠を仕掛けるんじゃないか?ガッコを囮にして、俺の無様を笑いたいのじゃないのか?

 堂々巡りの回廊は、どんどん俺を深みに導いて行く。

 如何にも、抜け出せなくなる前に、この巣穴を抜けて明るい場所で息を付かなけりゃならない。





 工業高校軽音部部室に、最近はキャピキャピの空に抜けちゃうんじゃね?位に明るい声が響いている。

 我らが、バンドのニューカマー!

 キーボード担当の片田来楽かただらいらとそのクラスメート神平奏美かんだいらかなみそれに加えて、品畑彩炎しなはたさふぁいや達が昼休み部室で弁当を広げている。

 流石に、6人は入り過ぎて狭い。

「おい、ライラと半端なレディ達よ、此処は俺達の隠れ家、楽園なんだよ!良い加減他所に行かね〜か」 

「「「一寸先輩、楽園に美女は付き物ですよ!」」」 

「ライラは、一応部員だけど、半端二人は部外者だっろ」

「半端って、酷くないすか?」

「「「こんな、可愛いJK捕まえて、言う台詞じゃないっすよ」」」 

「でも、お前ら、ライラ除いて虫つきだろ」

「「虫?虫って酷くない!」」 

「中坊の頃から、付き合ってるって」 

「「「売約済み、要らね〜!」」」 

「虫どもは、工業なんだろ〜」 

「「ハイッ!でも、虫は酷いです!」」 

「飯、一緒に喰えば、良いじゃん!」

「したら、ライラが1人に、なっちゃう」

「「「私ら、校内はいっも一緒だから」」 

「あぁ、マイノリティの事情ね!」

「「「違います!友情です!」」」

「まあ、どんな半端でも、良いよ!女の子は」 

「さっすが!ノゾキ先輩!」 

「おい、半端!言われてんぞ」 

「「「細かいっす!一寸先輩、虫眼鏡クラスの細かさ!嫌われますよ!女子に!」」」 

「ん、だよ〜悪いのは、俺かよ」 

「まっ、君のポジションだから、大事にしなさいな」

「カイタローも、そう言う?」 

「「友情!友情!」」 

「要るか!ん、なモン!」

「By the way!サファイアちゃんて、名前、凄いよね、まさに、キラキラネーム」 

「ウチ、お父さんが石が好きで、姉が7月生まれで、ルビー、私、9月生まれでサファイア」「名前、気に入ってますよ、漢字だし。因みに、姉は紅玉って書いて、ルビー読みです」 

「何でも、ありか〜」




 最近の俺達、バンドは、毎週2回の“音合わせ”と言う名前の“合同練習”を欠かさない。

 結構、本気でライブハウス出演を企画していた。夏休みも近く、バンド活動に金も掛かるので去年と同じ“海の家”でバイトはまっていた。

 その前に、バンドとして2回目ライラ加入後は初となる、ライブハウス出演に向けて動いていた。 

「えっと〜ウチらバンドのヤングロッカーコンテスト地区大会参戦が決まりました!」 「えっと、それ、俺達の地元、芋海市でやってるやつ?」 

「いつの間に、応募してたんだよ?」 

「4月くらいかな?デモテープとビデオを付けて応募して」

「一次通って、こないだ地区予選の招待状が届いたって訳よ!」 

「地区予選て、何時?」 

「地元枠だからか?分かんないけど、8月の1日だって」 

「本戦決勝が、8月10日!ここで、勝っちゃったら!海浜公園で開催される“ロッカーズ・イン・ニッポン”のオープニングで演奏れちゃうんだよ!」 

「観客、5万人の前でか〜!夢のようだな!」

「「「「「叶えっちまおうぜ!」」」」」

 地区予選の前に一度、ステージを踏んでおこうと!

 夏休み前に、無理無理な感じのライブ企画に参加させてもらう事にした。

 対バンは皆んな、この界隈じゃ名の有るバンドばっかりだ。

 でも、ここでやれたなら自信になる。

 ライラには、チョット、荷が重すぎるかもしれない?

 デビューがここでは!

 まぁ、何とかしちゃうんだよな、あの子は、きっと!





 ライブハウスで演奏る日が来た。

 俺達は、格から言ってもオープニングだ。

 なるべく盛り上げられるように、乗りの良い曲を並べたつもりだった。

「お前ら、少しは、箱あっためること考えろよ!」

「オリジナルが良けりゃ良いけど、曲もそこそこ、腕もそこそこじゃ流行ってる曲、完コピの方が全然良いぜ!」

「お前ら!ヤンコン出んだって!」

「若いって良いよな!コーコーセーだからってだけで、デッカいチャンスがあんだからよ!」 

 散々、言われてしまったが俺達には、明日がある!

 仰る通り!

 高校生だから出れるコンテストだ!

 何を言われようが、取ったもん勝ちだ!

 ざんま〜見せてやるぜ!

 俺達は、全員下を向いたりしなかった。

 ヤル気と自信が、満ちてきた!

 不思議に何を言われても、燃料に変わってしまうみたいだった。

 だって、言われる程ひどくないのが分かったから。俺達はやるんだ!!!




 閑古路倫で御座います。前回予告いたしました通り、本日から新連載始めました。タイトルは「時雨君は、50年後に委員長(死神になった)の腕の中」で、御座います。

 コットンキャンディと違いまして、ラストは未定です。私、老人で有りますから。エタラないまでも、寿命が尽きるかも知れません?

 それでも、老人の生き甲斐となっております、作品達をよろしくお願いします。

 下記、URLで作品ページを訪ねてみて下さい。

https://kakuyomu.jp/works/16818093088280442228/episodes/16818093088281688433

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