第19話 シャボン玉の消えた音
ミー君が走って行く、追いかけなきゃ、と走り出そうとするところを、マー君に腕を掴まれた。
振り向いて、反対側の平手でマー君を叩いた。
“パチン”
小さく、それでも、鋭い音がした。
マー君は、避けようともしないで頬に受け止め、そして言った。
「ごめん!ガッコに言わないで、勝手した」
「何で、あんな酷いこと言ったの?」「本気、じゃあ、ないよね?」
「冗談でもないよ、あいつが本気でガッコを求めなかったのは事実じゃないか?」
「それは、私がマー君を好きだったから」
「それが、あいつが、ガッコを諦める理由になるのか?」「ガッコだって、匠のことが気になっていたんだろう?」
「うぇっ、それを知ってて私を抱いたの?」「ひどい、酷い男!」
「お門違いだな、誘ったのは僕でも、決めたのはガッコだ」
「それじゃあ、なんで、さっき謝ったの?」
「匠を
悔しくて、涙が出てきた。
「泣くなよ、まだ、君は僕ほど無くしちゃいないだろう?」
「貴方は、無くしたんじゃない!捨てたんだ!」「私ごと、ミー君を捨てたんだ!」
「あぁ、確かにその通りだ、でもね、そうしなきゃ僕は、目標に届かないんだ」
「だったら、何で、私とミー君を、そっと置くように捨ててくれなかったの?」
「僕が行きたい処は、望んで、そして、選ばれて行く処なんだよ」「君たちは、先ず、選ばれる前に望まなかった」「色んな言い方は有るだろうけど、僕が望んだが故に、捨てざる得なかったもの」「それを、匠もガッコも、大切にしたいんだろう」
「私が、大切にしたいのは、マー君だよ」
「ありがとう、でも、僕は応えてあげられない、目標を諦めないから」「それに、正直じゃないね、僕だけじゃないだろう大切なものは、僕が、ガッコにとって
「そんなことない、私の、大切なもの全部あげたじゃないか」
「本当に、大切なものは、奪っちゃいないよ」「僕が頂いたのは、板チョコを包む銀紙の様なものさ、キラキラしいけど食べられない」「次に、ガッコを食べちゃう男は、手間要らずに甘いガッコを味わえるのさ」
「そぉいう、私は食べ物じゃ無いし、甘くも無いよ!」
「やれやれ、ミルクチョコかと思ったら、ビターチョコだった?」
「だから!食べ物じゃ無い!」
「....................................」
「脱線しちゃったね、君たちを放り投げる様に捨てたのは」「僕を、忘れてほしく無いから!」「いや、僕が絶対に忘れない為かな」「僕は選んだんだよ、君達との関係を絶ってまで目標とした物を掴み取ると」「でもね、残したかったんだ、僕が、選ばなかった素敵なものかも知れない君達に、僕がつけた傷跡を」「だから、矛盾しているかも?だけど、ガッコと匠には、素敵になって貰いたい」
「分からない!分からないよ!そんな自分勝手」
「解って貰いたい、訳じゃ無いから」
「じゃぁ、じゃぁさ、毎月、月末の土曜日、私に連絡して、経過報告?」「私とミー君を放り投げて、マー君が如何なちゃうのか?」「絶対、忘れないで報告するんだよ」
「あぁ、了解だ!」「毎月末の土曜日、いまの時間、19時に報告するよ」
俺は、花火の炸裂する音と、明滅する光の
声を、押し殺して泣いた!
散々、みんなに言われた。
お前は、
あぁ、俺は馬鹿だから、騙すよりは、騙されたいって、確かに言った。
見事に、騙された!
それが、こんなに辛くて!
悔しくて!
悲しいだなんて!
知らなかった。思わなかった。
ガッコ、君まで俺を笑っていたのか?
俺には、信じられない!
でも、ガッコは拓磨の女になるって決めて、そうしたんだ。
俺と一緒だったあの日、気もそぞろだったのは翌日のことが気に掛かったせいなんだ。
拓磨が仕組んだ事なんだろうけど、ガッコは俺のために来てくれたんだ。
次の日に、そんな大事な事が有ったのに!
俺との、友情のために、来てくれたんだ。
嬉しい事のはずなのに、泣けてくる?
こうなっても、こんなでも、俺は、ガッコが欲しいのか!
ガッコの友情が、欲しいんじゃなく!
寧ろ、ガッコとの友情は俺を一層虚しくさせてしまう。
ガッコの
どうすれば良いか、足りない頭で、考え続けた。
拓磨の、挑発に乗って、ガッコを取りに行く行くのか?
もう、ガッコは拓磨の、ものになったのに!
ガッコの決めたことを、認めてあげたい。
二人を祝福して、俺の、完全なる敗北を認めよう。
ガッコには二度と会わない、会えない!
ガッコを大切に思う気持ち、愛しくて堪らない気持ち、全部を閉じ込めてしまうんだ。
でも、ガッコには、俺が、恨んだり、嫌いになったりしていない事を伝えたい。
もう、二度と会えないのならば尚更だ。
俺は決めた、ガッコに対する全ての思いを封印して、ガッコに、俺がお前を嫌いになったんじゃ無いと教えるために。
友情の証しのピアスを、ガッコがもういない、戻るはずの無い左側....左の耳に付けよう!
翌日、9月最初の日曜日に、俺はピアス穴を開けるために、バスに乗った。
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