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「───皇帝皇后両陛下。本日はご多忙な中ご足労いただきまして、ありがとうございました」


 少し遅いタイミングですが、お二方へのご挨拶は必須。私の言葉と同時にお父様方も頭を下げているのが気配で分かりました。


「久しいね、カティア。アニエス達も元気そうで安心したよ。久しぶりの対面がこのような形なのは残念に思うけれど、これ以上長引かせるべきではないからね。私達は基本的に傍観に徹するから楽にして」

「後でゆっくりお話ししましょうね」

「はい。ありがとう存じます」


 皇帝陛下も皇后陛下も、普段は穏やかで優しい方だからこそ、今回はより緊張してしまうのですよ……私達に対する怒りなどは微塵も感じませんが、彼らに対しては非常にお怒りのようですから。普段穏やかな人ほど怒ると怖いと良く言われますし。


「では早速ですが、こちらで話し合った皆様の罰についてお話ししますね。聞き入れるかどうかは別ですが、弁解や異議があるようでしたら最後にどうぞ。世間話から始めるような場でもありませんので単刀直入にいきますね」


 そこまで伝えて一度彼らの方を見ると緊張感が高まったようで、ピリッとした空気になりました。こんな状況でもレイモンド様の浮気相手だった元男爵令嬢は私のことを睨んできますね。自分の罪が一番重いと、まだ理解していないのでしょうか? ご両親は今にも倒れてしまいそうなくらい血の気が引いておられるというのに、ここまで頭が弱いとご両親が哀れですね。逆に感心してしまうレベルです。


「そうですね……まずは王家の方々からにしましょうか。色々と意図があったのでしょうが、無理に結んだ婚約が原因となったことですので、王国には大帝国への慰謝料を請求致します。額についてはこちらに記載されている通りです」


 お父様から一枚の書類をいただき、国王陛下にお渡しします。それを見た陛下の表情は一気に引き攣りましたが……


「い、いくらなんでもこれは……」

「正直に申し上げますと、それは大帝国からすると大した金額ではありません。ですが他に望むものなどありませんし、こちらにも体裁というものがありますからね。それとも、王国はたったそれだけの慰謝料も払えないほど財政難なのでしょうか? ───何か言いたいことがあるのならば最後に、遠慮なくハッキリと、申し上げてくださいね。まだ何か言いたいことがありますか?」

「いえ……」

「そうですか。では次、レモーネ公爵家です」


 遠回しに『大帝国からすればこの国は大した財力のない小国でしかない。その気になればいつでも侵略できるだけの国力差がある。ついでに、大帝国からすれば王国の所有物など簡単に手に入るので、金銭以外に求めるものがない』と言いましたが、私としてはここまで言う必要などないと思っていますよ。ですが両陛下があのご様子ですから少々言いすぎなくらいでないと、何かのきっかけでお二人が暴走されては困ります。私がキツく言うことで少しでも怒りを鎮めてくださると嬉しいのですが……


 『弁解や異議があるようなら最後に』と伝えたのは話が進まないからでもありますが、別の話を挟むことで異議申し立てをしづらくする、という意図があります。特に非があるのが自分達となると、言い辛くなるでしょう? 心配なさらずとも、傾国するほどの金額は請求していません。ただ少し辛いかもしれない程度です。それでも大帝国からすれば求める意味がないくらい少額ですが。

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