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 ◇


「カティア、緊張しているのか?」

「少しだけ。伯父とはいえ、皇帝陛下がおられる場で主導となって話すのは心の準備が要ります」

「カティアなら例え失態を演じてしまっても笑って許してくださると思うけどね? まあカティアは妙に本番に強いところがあるから大丈夫だと思うよ」

「そうですね」


 ローデントの屋敷に帰り、待っていてくださったお父様方にご迷惑をおかけしないよう急いで登城の準備をし、今は無事に王城に到着したところです。お忍びではありますが大帝国の皇帝陛下が来られているということで、外からでも王城内が緊張感で包まれていることが分かりますね。恐らく一番緊張しているのは断罪される立場の方々でしょうけど。


「行くぞ」

「はい」


 話し合いの場は応接間。集まっているのはローデント公爵家、レモーネ公爵家、ルー男爵家、王国両陛下、そして大帝国の皇帝皇后両陛下です。男爵令嬢───名前は忘れてしまいましたが、彼女も同じ場に集まることになっています。不敬罪等で投獄されている罪人扱いの者が王族と同じ場に集まるなど本来許されることではありませんが、何を考えておられるのか皇帝陛下が希望されたそうですので、今回は特別だそうです。

 たった一つの希望を断って大帝国の皇帝陛下という重要人物を敵に回す可能性を作る程、国王陛下も無謀なことは考えなかったのでしょう。当然、彼女に発言権などありませんけれど。


「カティア、皇帝陛下は基本的に黙っておられるそうだ。何かお考えがあって来られたのだと思うが、あくまでも主導権はカティアにある。それに内々の話し合いだ。あまり意識しすぎるな」

「分かりました」


 応接間に到着し私に声をかけてくださった後、一息ついたお父様は扉を守るようにして立っていた護衛に声をかけ、彼らもお父様の言葉に一礼して扉を開けてくださいました。

 部屋の一番奥に座っておられるのは皇帝皇后両陛下。相変わらず若々しいお二方ですが、発する威厳は大陸一の皇帝と皇后のそれ。どうしても緊張してしまいますし、少し気圧されますね……そんな素振りを見せるつもりはありませんが。それに、集まってくださった皆様は緊張からか少し心配になるくらい顔色が悪いですし……自分以上に緊張している人がいると少し落ち着くものです。


「遅くなり申し訳ございません。早速話を始めさせていただきます」

「皆様、お集まりいただきありがとうございます。本日はが進行させていただきます。それから、この場ではローデント公爵家ではなくアーリスティンの皇族として参加しておりますので、皆様もそのおつもりで」


 問題視されているのが皇族に対する不敬と冤罪での不適切な婚約破棄ですからね。皇族として参加するとなれば尚更失敗するわけにはいきません。落ち着いて話しましょう。

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