三五八の緩むとも漬け秋茄子

季語 秋茄子(秋・植物)

秋になってから採れる茄子。実がキュッと引き締まり、旨味も甘味も増してくる。



三五八…東北地方の人以外は、聞いたこともない代物かもしれない。これは「さごはち」と読んで、地域伝来の漬物の漬け床のこと。

生米と米麹に塩を加えたもので、その混合比率が「塩:糀:蒸し米=3:5:8」であることが名前の由来とも言われている。


秋茄子は漬物にぴったり。王道は塩に砂糖をひとつまみ、そこへ焼きミョウバンを加えて作る、定番のあの茄子漬け。でも三五八の味を愛する福島県民にとっては、三五八で一晩二晩漬けた茄子も捨てがたい。


三五八の床は糠漬けのように、長期間使い続けて育てられるようなものではない。野菜を漬ける度に水分が増えてびしゃびしゃになり、味も薄くなってゆく。ザルで水気をきって塩を加えれば、また漬けられはするが、そのうち米も麹もドロドロに溶けてしまう。そうなったら新しい漬け床に替えどきだ。


水分をたっぷり含んだ胡瓜と茄子は、床の緩みが早い。特に茄子なんか、身を萎めつつどばっと水を吐き出すから、大変だ。


それでもやっぱり、美味しい茄子漬けは食べたい。多少の困難とコストを払ってでも。



三五八の緩むとも漬け秋茄子




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俳句とエッセイ 2024 九月 石塊 @takagisekikai

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