54:手当てをしてもらった

 俺に合流するべく、エレザが入口方面へ向かったのと同時に。


『いやあ。お疲れ。凄かったよ』


(あ、ああ。女神さんか)


『まさかあんなに動けるとは……時代はチョキザップだね』


 チョキザップもまあ、基礎体力作りには役立ってはいるんだろうけど。結局、最後はいかに腹括れるかの度胸勝負だよ。こんなのは。


『なるほどねえ。そんなに腹括れちゃうほど、ポーラが可愛いんだね』


 まあ、それは当然だけど。これくらいで泣き入ってたら、多分これから錬金術師としてやってくのは無理だろうってのもあった。

 そして、錬金術をギブするということは即ち、選挙での敗北を意味する。つまりここで逃げたって袋小路だったんだよな。


(ところで……ガーゴイルの爪に毒とかはないよね?)


『うーん……大丈夫だね。流石にそこまで凶悪じゃないでしょ。エロゲだよ?』


 とはいえ、そのエロゲで命の危機を乗り越えたばかりだからな。どうしても用心深くもなろうというもの。


『それより……ほら。ガーゴイルが素材を落としてるよ』


 言われて目を凝らすと、確かにキレイな正方形になってる石の破片が10ほど。他のボロボロに瓦解したのとは明らかに様子が違うし、素材ってことだろうな。


『レシピ帳を出してごらん』


 言われるまま、遠隔で取り寄せる。微かに虹色に光っていた。そしてそれに共鳴するように、素材の方も光り始める。前にゲンブ鋼石を見分ける時にも、この共鳴現象は利用したが……


(これは、何の素材だろう?)


『ページを捲ってごらん。どこかのページの必要素材が光ってるハズだよ』


 そういや、そんな便利機能あったな。

 早速捲ってみると、


「あ。鎮めの石、か」


 確かにその文字が淡く光っていた。

 賢者の石の素材だな。守護者のドロップだから「鎮め」の名を冠する物か。なるほど。


『良かったね。このままじゃ、そのうち暴走して誰かに無理矢理という未来もありそうだし、早めに作れたら助けになるでしょ』


 そんなこと……あるワケないとは言い切れないのが怖い。

 シェレンさんのお尻を揉んだ時。エレザのお尻に股間を打ち付けまくった時。ポーラの土手さんを触ってしまった時……

 今まで女性に狼藉を働くような輩は最低だと思ってたし、今もそれは変わらないんだけど。


(女体って、マジで理性を飛ばすんだよなあ)


 ということを、この島に来て初めて知った。無理矢理は絶対ダメだけど、我慢が効かなくなる気持ちも分かってしまうという。


『うん。限界が来る前に作った方が良いだろうね。それか、誰かに合意の上で処理を頼むか』


 いや、それは……

 以前も思ったけど、やっぱり陰部を見せるのは中々に勇気が要る。島の誰一人、存在すら知らない器官だからな。人間だと思われなくなるリスクまであると思う。


『まあそうだね。っとと。エレザが回ってきたみたいだ』


 女神さんの気配が遠ざかる。てか、時間止めてくれてなかったのか。まあいいけど。


「アキラ! 大丈夫か!」


 入れ替わりに、エレザの叫び声。振り返ると、血相を変えた彼女が部屋へ飛び込んでくるところだった。

 ありがたいことだ。こんなに心配してくれるなんて。


「うん、大丈夫だよ。少し血は出てるけど」


 今もジワジワ出てるから、少しではないんだけど。心配されると、「大丈夫」って言っちゃうのは日本人気質の成せる業か。


「待っていろ。今、ケアケアジェル軟膏を」


 エレザがカバンから、ジェルの塊を取り出す。俺はシャツを脱いで上半身裸になった。

 爪の刺さった辺りは割と深い傷痕だ。そこにエレザが軟膏を塗りつけてくれる。思わず声が出そうなほど沁みたが、グッと歯を食い縛って耐える。


「……っ」


 すげえ。血が止まった。ただ完治とはいかないようで、


「これは何回かに分けて塗るのが良いだろうな」


 時間を置いて、ということか。


「指の方は……比較的、軽症のようだな」


 そちらも塗り塗り。以前握手した時にも感じた、少し硬い手の感触に包まれる。


「ありがとう。だいぶ楽だよ」


 と、お礼を告げて隣を見ると、どこかポーッとしたエレザの顔があった。


「な、なに?」


「え? あ、いや。その……自分でも分からないんだが……さっきのアキラの戦ってる姿が……その」


「ん?」


 どういうことだ、と訝しんでいたら。


『多分、見惚れたということじゃないかな』


(え?)


『男が戦う姿に、本能が反応したというか。以前もお姫様抱っこした時、キュンとしてたみたいだし』


 ああ、あったなあ、そういうのも。

 なんかむず痒いけど嬉しい。前世では俺に見惚れてくれる女性なんて皆無だったもんな。

 ……まあ、男が俺しか居ないという環境ブーストありきなのは分かってるけどね。


「っ!?」


 いつの間にか、胸板をエレザの手が撫でている。他人に触られると、こんな感じなのか。じゃなくて。


「え、エレザ?」


「あ! す、すまない。つい。私のと全然違うものだから」


 まあ……うん。エレザのバインバインとは似ても似つかんだろう。


「筋肉も、私よりある」


 通ってて良かった、チョキザップ。


「あ……私のも触るか? それでおあいこだからな」


「い、良いの!?」


 揉んで良いのなら、是非もない! と、喜び勇んで……思い留まった。

 今じゃないな。腕が全快じゃない状態では、もったいなさすぎる。それに……いい加減、宝箱も開けないとな。モタモタしてたらガーゴイルがリポップしたりするかも知れないし。

 というワケで、俺はクールに。


「また……今度お願いするよ……」


「凄く物欲しそうな顔をしてるが、本当に良いのか?」


 全然クールに決まらなかった模様。

 

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