第3話 モンスターより怖いものってあるんだぜ

 オークって美味しいんだぜ!

 最初に食ったゴブリンが不味すぎただけの気もするけど、あれより全然食いやすい!


 経験値もゴブリンより良い気がする。

 少しづつだけど強くなってる自覚ある。


 狼について歩いて半年くらい経った。

 割と感覚的なものだから、もしかしたらもっと経ってるかもしれない。


 最近は少しはダメージ与えてる気もするし。

 成長したなぁ、俺!


 スキルも増えた。

 【豆柴クロウ】

 【豆柴ファング】

 【全力逃走】


 なんか、毎回ノリで言ってたら本当にスキル化したでやんの!


 では、その驚きの能力を公開しよう。


 【豆柴クロウ】

 穴を掘る時に効果を発揮する。

 骨などを埋める時にも効果を発揮する。

 攻撃にも多少は影響する


 【豆柴ファング】

 甘噛みを上手に出来るようになる。

 攻撃にも多少は影響する。


 【全力逃走】

 尻尾を巻くことで、逃走しやすくなる。


 驚いただろう?

 散々戦った結果、スキルが愛玩動物なんだぜ。


 こういうクソスキルって成長するとチートになるのがお約束なはずなんだが、どう転んでもクソスキルのままで終わる未来しか見えない。


 なんか有効なスキル取れないかな?

 多分犬の行動に沿ったものの方がスキルになりやすいと思うんだよな。


 なんか無かったかなぁ?


 【遠吠え】

 遠くに声が届く。

 負けている時はより遠くに届く


 【身震い】

 身体についた水分を弾く事が出来る。

 精神的に落ち着く。

 戦闘にも多少は影響する。


 いい加減にしろよ俺の身体!

 全然強いスキル覚えねぇじゃねぇか!


 なんか回転して熊みたいな化け物一撃で殺すみたいな技覚えないのかな?

 カッコいい名前のスキルが欲しい!


 なんか、滅とか絶とか強そうな漢字いっぱい使った技とか欲しい!


 待てよ、今までのスキルもノリで使ったり、意識したりで手に入ってるな。

 これは、滅とか絶とかつきそうな技! って意識したら獲得できるんじゃなかろうか。


 おし! 今度こそ強いスキル手に入れるぞ!


 【絶滅危惧種】

 この世界に他にいない希少種。

 見た目的にはただの犬に見える。


 うん、知ってた。


 薄々勘付いてたわい!


 いやいや、そうじゃ無い、確かに滅も絶もついたスキルだけど、俺が求めていたのはこれじゃ無い。


 もういいや、スキルで強くなる方向は諦めよう。

 地道に強くなろう、そうだそうしよう。


 せめて自分一人だけでオークくらい倒せるようになりたい。


 地道に強くなろうとした数日後、事件が起きる。


「お前ら裏切ったな!」

「いーや俺たちは裏切ってなんかいないぜ、最初からお前をカモにしようとしていたからなぁ!」

 何やら人間の声がする。


 っていうか、こっちの世界来て初めて人間に遭遇したな。

 俺ってこっちの人間の言葉理解できるんだな。


 斧持ったデッカい男、手にかぎ爪つけた細い男、杖持った女。

 が、一人の男を囲んでいる。


 あれは多分殺されるなぁ。

 豆柴の俺じゃあ確実に返り討ちにあうから、どうする事も出来ないな。

 見ず知らずの男のために命をかけられるほど正義感ないしなぁ。


「ダンジョンのお宝はそれ一つ、俺たちはそのお宝が欲しい」

「何を言ってるんだ! これを手に入れるためにお前たちと組んだんだぞ! 依頼料だって払っただろう!」


 へーこの辺にダンジョンとかあるんだ。


「依頼料とお宝両方手に入る方がおとくだろ?」

 下卑た笑い声が辺りに響く。


「ギャァァァ」

 あーあ、あっさり殺したよ。

 人間って怖い。


「ん?なんだありゃ?」

「野良犬じゃねぇですか?」

「違うわね、魔獣って簡易鑑定で出たわ」


 やべ! 見つかった!


「魔獣なら殺しておくかぁ」


 うわ、そうなるのか!

 逃げなきゃ!


 全力逃走!


「あ!逃げやがった!」

 逃げるに決まってるだろ!


「追いかけるぞ!」

 ヤバイヤバイヤバイ!


 ダメだ追いつかれる。

「ガウッ!」


「なんだ! 体当たりされた!」

 狼さんだ!


「ガウッ!ガウガウガウ!」

 なんか逃げろって言ってるのか!


 狼さんなら強いから、なんとか出来る…いや、違う…そんな空気じゃない。

 こいつらメチャクチャ強いんだ。


「ガウッ!」

 怒られた。

 早く逃げろって言ってる。


 そうか…持ち堪えられないのか、俺を逃すために命かけてくれるのか…。


 ごめん、そこまでの関係だなんて思ってなくて。

 ごめん、その優しさに甘えて。

 ごめん、足手纏いにしかなれなくて。


 俺は全力で逃げた。


「ギャンッ!」

 狼の悲鳴が聞こえる。


 ごめん、ごめん、ごめん。


「キャン!」

 脚に猛烈な痛みを感じた。


 ナイフが刺さってる。


「お、当たった」

「デカい獲物獲れたし、もうそんなのいいだろう」

「脚怪我したならどうせ生き残れないわよ」


「金になりそうもないしなぁ、ほっとくかぁ」

「おう、街に戻るぞ」


 助かったのか…。

「キャン!」

 腹が急激に熱くなった。

 いや、熱いんじゃない、ナイフが刺さってる。


「ナイフだけ回収したら俺も帰るわぁ」


 痛みの中で俺は意識を失った。

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