杉原の悩み

 杉原は何かを考えていた。信長に話しかけた。

「信長殿」

「何だ、杉原殿?」

「そういえばこの国には、人間が入ることはできないんですよね?」

「大統領はそうおっしゃっていたな」

「自分で言うのもあれですが、私は最もユダヤ人に好かれているはずです。今、人間として生きているユダヤ人に会うためにはどうすればよいのでしょうか?」

「そうだな、この国はどこぞのミサイルの国とは違って、国民が外国に行くことができる。人類の入国は禁じられているがな」

「ユダヤ人、もとい人間はここに入ることができない。そうだ、私が行けばいいんだ!」

「そういうことになるな」


 杉原は大統領に言った。

「私をこの国の外交官にしてください!」

「確かに、あなたは人間だった頃も外交官だったね。でも、どこの国と外交を?」

「決まっています、イスラエルです!」

「イスラエルか。あなたはユダヤ人から最も愛されているだろうと思われる。しかしイスラエルは今も治安が悪いらしい。大丈夫?」

 家臣のロボットたちがそこに来た。

「大統領をはじめとするこの国のロボットたちは、銃で撃たれても死にません。それほどまでに頑丈に出来ているということです」

「なんだ、そうだったんだ!ぜひイスラエルに行ってほしいよ!」


 その夜、大統領はイスラエルの首脳とテレビ電話をした。

「こんばんは、南城真奈美です。こっちは20時です」

「こちらは14時です」

「私の国の国民がこんなことを言っていました。外交官にしてくれと」

「なるほど。それでどうなったのですか?」

「私は彼が外交官になることを許しました。イスラエルと我が国の架け橋となってもらうつもりです」

「ちょっと待った。あなたの国の国民たちはみんなロボットで、しかも歴史人物の復活ですよね?彼の名前は?」

「彼は歴史人物の中でもユダヤ人が好きそうな人物の復活なのです。杉原千畝といいます。もしかしたら、またユダヤ人を救ってくれるかもしれません!」

「なんと!我が国の国民もたいそう喜ぶでしょう!ぜひともお願いいたします」

「もちろんです」


 三日後。大統領と国民は、杉原を送り出すことになった。

「わしみたいな嫌われ者にはなるなよ!」

「人間だったときと同じように、ユダヤ人の救世主となってくださいませ!」

「余も、この地から応援しておるからな!」

「行って参ります!」

「行ってらっしゃい!」

 杉原は空飛ぶ車に乗った。車は離陸し、やがて亜熱帯の青い空に消えた。

「わしらもどこかで活躍したいな。人間だった頃は宇宙に興味があったから、NASAとかで働こうかなと思う」

「あっそう。余はフランスの英雄だから、EUで働いたほうがフランス人が喜ぶのだろうな」

「私は差別をなくすため、国連で差別の撤廃を人間たちに訴えかけることにしよう」

「みんな、人間たちの権利を守るために私たちが奮闘しなければならない。覚悟はいい?」

「はい、大統領!」

「努力を積み重ねていこう!」

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