大吉なのに女難の相

 僕は顔を涙で濡らしながら目を覚ました。

「コレが僕の初夢かよ?」

まさか5年前の桜内との別れを初夢で見るなんて最悪な年の初まりだ。

初めて飲んだサントリーウィスキーでこんな夢を観るなんて…

僕は涙でぐしょぐしょになった目を擦り起き上がった。

リビングに降りて行くと、もう母さんが餅を焼いて雑煮の準備をしていた。

「あけましておめでとう。どうしたの翔、目が真っ赤だけど大丈夫なの?」


「うん大丈夫だよ、母さん。少し怖い初夢を観ただけどから…」

母さんにはさすがに夢の内容までは恥ずかしくて話す事が出来ないかな…


「初夢で悪夢を観たの? 今年はあまり良い運勢じゃないのかね? 翔、青谷家の代表でお祓いしてもらって御札もらってきなさい」


「えっ僕が? 今日は神社はかなり混んでるから待たなくちゃならないし… 面倒くさいよ!」


「帰りにおみくじひいていいから!」


「それじゃなんだか使みたいじゃないか?」


「だって翔あなたお祓い受けるの初めてでしょう?」

母さんが真面目な顔して言うから僕はなんだか笑ってしまった。

『悪い夢の事なんて忘れろ』

面と向かっては言わないけれど、きっと母さんはそう言いたいのかな?


 近所の神社は決して大きい神社ではないけれど、初詣の参拝者でそこそこ賑わっている。

お祓いの順番を待つ間、やっぱり初夢の事を思い出してしまった。

桜内とはあの日から一度も顔を合わせないままだ。

きっと助からなかったんだろうな…

大原麗子が一緒に桜内も連れて行ってしまったのか…

『桜内は何も悪い事していないのに』

もう一度、夢の中で桜内に会いたい。

今日初詣でせっかく参拝に来ているんだ。

神様にその事をお願いしてみよう。

僕は賽銭箱に百円を入れて「夢の中で桜内に会えますように」と呟いて手を合わせた。

くるりと振り返りると右手におみくじが売られているのが目にはいる。

母さんに『おみくじひいていいから』と言われたのを思い出し、また笑いそうになるのを必死に堪えた。

『今年はどんな運勢になるのかひいてみようか』

そんな気分になっておみくじの前にきた。

200円と100円のおみくじが並んでいた。

もしかして200円出した方が良い運勢なのか?

でもさっき神社の階段を登って来る途中ですれ違った人が「ひぇ〜 凶なんて初めてひいたよ」なんて言っていた。

多分… 『どちらをひくか?』と決めるところから僕の運勢は既に決まっているんだと思う。

そんな事を思って200円じゃなく100円のおみくじをひいた。


 僕の今年の運勢は大吉だ。

商売運良し、学業良し、探し物現る。

大吉らしく良いことだらけか…?

ん? 女性に注意?

大吉をひいたのに女難の相?

僕がハニートラップにかかるっていうのか?

そういえば今朝の夢…

まさか…

夢で現れた桜内が実は死神で僕の事を死の世界へ誘っているとか…?

さっき神様に『桜内とまた夢で会えますように』ってお願いしてしまった。

まだ死にたくない。

今から神様にお願いを取り消してもらうなんて出来ないよな…

せっかく大吉がひけたのに僕は不安になってしまった。

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