始まる前に終わらせる。
彼は女の子に好かれやすい人だった。
女友達も多かった。というか、愛されやすい体質?誰にでも気さくだし優しいしノリもいいし面白いし。だから大切な友達だった。大切な友達でいなくてはならなかった。
私の後輩が彼を好きになった。
そっかぁ確かに好かれるよなぁって簡単に流していた。彼はあまりその好意に答えられる感じではなさそうだったから。
でも、でもだ。
私と彼とどっちもと仲のいい、
ある女の子が彼を気になりだした瞬間、何かが壊された。
ずっと友達でいなくてはならない関係、いつの間にかその子は壁を破っていた。
私はそれまである意味満足していた。このままこの関係で、彼がいる集団の中で笑い続けられるんだろうなという、今思えば全く根拠の無い安心感。
それを、その子は、集団の中にいるにも関わらず無邪気に恋愛感情というものを抱き始めてしまった。
わかっている。恋愛感情は操れるものでは無い。男女の友情が成り立つことは現実に有り得ないという意見も理解しているつもりでいた。
でも、彼の前ではそれを成立させていないと関係を維持できないと思っていたから。というか、彼がそうしていたから、彼がそれを成り立たせる人だと信じていたからそれに合わせていた。
なのに、なぜ?
好意を持ったことに関して、私は応援しようと思った。応援しなくてはならない気持ちでいたから。
でも、私の密かな信頼を裏切られたことと、私が勝手につくりあげたルールが破られたことで、私の彼への思いは少し歪になってしまった。
友達に向けた愛が、少しずつ愛情が、愛しい、恋しいに変わっていく。
それと同時に、気持ち悪さも流れてくる。
彼はそういうんじゃない、応援しなきゃいけない立場にいるから、あくまで遠目で様子を見ながら、その子の恋が叶う可能性は絶対残して、邪魔にならないようにすべき。
と思っているからこそ、私が好意を抱くのは絶対にどこか違っていると感じていて。
それに、その子の彼への思いより、私の彼への思いは絶対弱い。その子が友達から恋へと発展させたのに対して、私は友達感覚は残っている。
でも、友達としても人としても凄く大好きで尊敬しているからこそ、その子だけに独占されたくないみたいな思いがあって。
その子は私のそんな思いに勘づいたのか、
別に私に気を使って我慢しないでいいよ!
邪魔なんてしてないから大丈夫だよ!
とか言ってくれて、こんなぐちゃぐちゃしてる私のことを見透かしてくる。
こんなぐちゃぐちゃしてるのに、それを受けて入れてくれている。なんで?なんでそんなに優しいの、心が広いの。私にはそれが理解できなくなった。
今までその子のことが大好きだったはずなのに、少しずつ少しずつ、その子と話すたびにどこかで苦味がする。
その子と肩を寄せたり、ハグしたり、至近距離で見つめたりするのは日常のいつでもあったはずなのに。その子を友達として本当に愛しているはずなのに、
今はどこかで、「この子は彼を好きになった」という事実が、その子との心の距離をつくっている。
私は応援している。その子のことを。
話を聞いている時、その子が思い悩んでる姿が可愛いと思った時、そこで私はちゃんと応援できていると自覚できる。
いけると思うけどなぁ、
え仲良いねいいじゃん、
と心から言えるし、その時は上手くいって欲しいと思える。
でも、その子を応援するようになってからずっと、ずっと苦い。
その子が私に対して素直に嬉しいとか惚れちゃうとかかわいいとか愛してるよーとか言ってることに、さめたような気持ちになる。まるでその子が別人になったように、私が愛していたその子が恋と共に薄れていったように。
察されないように気をつけてはいるけれど、私は分かりやすいから気付かれているのかもしれない。最近その子が私に甘えてくるようになったのは、それに気付いて私を元気づけようとしているか、私がさめたせいでその子からのスキンシップに違和感を感じてきてしまったのかどっちなのだろう。
私はこの集団でずっと仲良くいられると思っていた。でも、私が彼とその子への依存を和らげない限り、それは無理だ。
できるだけ隠密に、誰にも彼への好意を悟られることなく穏便に、
これを勘違いへ持っていこうと思う。
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