第2話 同期コラボ
「こんマシー、魔王を倒すべく神に選ばれた勇者、マシロです。今日はコラボやってきまーす。」
「こんまおうー。我が名はマオ!今日は雑談で人間どもの時間を奪ってやるぞ!」
「出たな魔王!」
「こい勇者よ!」
「やつの弱点は……心臓だ」
「誰だお前!」「中ボスだァ」
「中ボスかよ細かいな!!」
今俺は何をしているのか。……そう。コラボである。もちろんVTuberの。俺はこの地球でオタク文化にハマった結果企業勢VTuberに行き着いた。
それも全てこの地球が悪い。俺はほんの少し前まで剣と魔法の世界にいたんだ。急に刃物を規制され化学で魔法がほとんど再現され、日常の苦労が全て全自動で行える世界。こんなのハマらない訳が無い。
今俺は絶賛売り出し中の新人企業勢VTuber。魔王を倒すために神に勇者として選ばれた好青年。中の人の設定をそのまんまアバターに投影した。
コメント
・始まったと思ったら急に何やってんだこいつら
・風呂屋だよ()
・入浴料払わなきゃ……
・さすが世紀末、まさか勇者対魔王が見られるとわなぁ。
俺が入ったのはVTuber世紀末という事務所で、今コラボしているのはそこの同期のマオさん。
マオさんはロリ系魔王のアバターで最近生まれたばかりのためVTuber活動を通して人間から魔力を奪い、蓄えた力で世界征服する準備をしているらしい。
そして今は同期との初コラボ。ここは仲の良さをアピールして行かなくては行けない。そういうわけでの初手ド〇クエごっこだ。コメントを見る限りネタも割と伝わっている。つかみはよし。
「というわけで今日は同期のマオさんに来てもらってまーす。マシュマロ食べてきマース」
「いやまさか勇者対魔王のロールプレイがこんなところでできるとは思ってなかったぞ」
「楽しんでもらえてますか?」
「すっごく楽しいぞ!」
俺だって最近は魔王を倒す時口上すら名乗らず不意打ちで殺してたからなぁ。久しぶりに魔王との会話みたいな感じでかなり楽しい。しかも今は命かかってないし。
「今日は俺が選んだマシュマロを2人で答えてきますね。じゃあさっそく、おふたりの面接話を教えてください。ですね。マオさんは面接の時なんかありました?」
「我は魔王だぞ!って言ったら受かったぞ!」
「奇遇ですね。俺も自分は勇者ですって言ったら受かりました」
コメント
・うせやろ
・一般常識とかないんですかね()
・やっぱり世紀末って頭おかしいことが採用の基準だと思うの
俺もこんなんで面接受かってるとは思ってなかったな。採用通知来た時は世紀末の正気を疑ったぞ。
因みに世紀末というのは俺とマオさんがつい先月ほどに所属したVTuber事務所だ。VTuber事務所と言いながらダンジョン配信にも手を出しているため集まる人材もネジの逝ってしまっている人達がいる。
俺が世紀末に応募しようと思ったのはここ以外の面接が全部落ちてやけくそになっていたからだ。
「んじゃ次行きましょー。2人でゲーム配信するなら何したいですか?」
ゲームか。正直俺の反射神経だとFPS系のゲームとか相手の動き見てから攻撃できちゃうんだよな。格闘系とかも相手の攻撃モーション見てから後出しで攻撃できるし。だから俺にはホラゲとか対戦系じゃないゲームしかできない。
「我はスーパー〇ニーマンとか面白そうだと思うぞ。マシロはなにかしたいゲームはあるのか?」
「スーパーバ〇ーマン面白そうですねこんどやってみましょう。……俺はホラゲー見守り配信とかしてみたいですね」
「誰の?」
「もちろんマオさんがプレイして俺が傍から見てる感じです」
「なんで私だけプレイする感じになってるの!?」
一人称私に戻ってますよー。にしてもマオさん反応いいな。俺が出したボケも大半拾ってくれてるしこっちとしてもかなりやりやすい。
「まあそこに関しては一旦置いておくとして、」
「置いてちゃいけない気がするのだぞ」
「次の質問行きましょうか」
「こいつ人の話聞かねぇぞ」
ここでグダグダやってもいつか視聴者に飽きが来るかもだしこういうのは早めに撤収するにかぎる。
「次の質問は、おふたりはお互い勇者と魔王のわけですが、お互いを倒そうとかは思わないんですか。……いい質問ですねー。因みに僕は未熟な相手は成熟してから戦いたいタイプです。ヒソカみたいな感じかな」
「あれ現実でやるのはかなり気持ち悪いと思うのだぞ。我としてはゲームとかも力を蓄えて本気を出せるようになってから無双したいタイプだから今は手を出さないのだぞ」
「ポケ〇ンの最初の草むらでレベルMAXにしてそう」
「もちろんしてあるぞ!」
「えぇ……。」
コメント
・マシロ引いてますやん
・いやマシロもヒソカムーブは充分キモイ
・マシロはSでマオちゃんはMなんじゃね
俺がSだなんてそんなわけないじゃないかぁ。
「……?マシロ、SとかMとかってなんだ?身長のことか?」
「え」
まさか……知らないのか?それともロリキャラとしての設定……?いやこれ多分本当に知らない!?存在したのかそんな天然記念物!!
「そ、そうですねー。身長の事じゃないですか?マオさんとか力蓄えて成長したら身長伸びそうですしねー。」
「おー!なんだそう言うことか。だったら我は身長も力もドデカくなるだろうからドMだな!」
「ブッフw……」
「マシロなんか今出しちゃいけない声出してなかったか……!?」
コメント
・これはマオちゃんが悪いw
・マオちゃんはドM……うっ。……ふぅ。
・無知って罪だよね
・ムチムチって言った?
ダメだ、これ以上続けてたら俺の身が持たない。時計を見るともうコラボ開始から1時間近くたっているのでこれでお開きにしよう。
「そろそろ時間なのでここら辺で配信閉めようと思います。マオさん今日は楽しかったですか?」
「超楽しかったぞ!またコラボしたいぞ!」
「そりゃ良かったです、じゃあ今日はここで終わり。おつマシー」
「おつマオだぞー」
肩の力が抜ける。にしても雑談だからほんとに話しているだけだったのだがマオさんも積極的に話しかけてくれるから面白い配信になったなぁ。これからも積極的にコラボしていきたい相手だ。
配信が終わって少しダラダラしているとスマホに通知が来る。どうやらマオさんのようだ。
「お疲れ様ですマシロさん!今日はほんとにありがとうございました!」
「いえいえこちらこそ。またコラボしましょう」と。
そうだな……もう飯でも食って寝よ―――
先程返信したマオさんからまた連絡が来た。なにか伝え忘れたことでもあったのだろうか?それとも今度のコラボの予定とか、
「今度ダンジョン攻略配信を一緒にしませんか?」
「もちろん大丈夫ですよ。マネージャーに空いてる日聞いてきます。」
そういえば世紀末は同期で一緒にパーティーを組んでダンジョン攻略配信をするのが定番なんだったか。だったらあともう1人、同期のおっさんを呼んどくか
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光の入らない薄暗い部屋で一人泣きわめいている女がいた。
「やっちゃったぁぁぁ。どうしようその場のノリと勢いだけで誘っちゃった。マシロさんに絶対迷惑かけちゃってるよ……。どうしよう話し方的に絶対マシロさん陽キャだし……。そんな格上の相手に合わせられる服なんて私持ってないよ……。流石勇者……陰キャでオタクな魔王の天敵すぎる……。面接の時みたいにマシロさんの認識改変して……どうにかして魔王ってバレないようにしなきゃ。」
……そう。マオは魔王だった。ついでにインターネット上でのみ饒舌になるタイプの陰キャでもあった。
魔王を1000回倒す勇者、オタ活に目覚める 魔王軍の三下 @maounosansita
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