第54話:ようこそ異世界へ。

アパートを出た健斗・・・平和な空を見て言った。


「あ〜あ、なんでこんなことなるかな〜」

「俺たちが何したって言うんだ・・・」


「え〜いまさられふか?」

「さっきまれパンさんを助けるってやる気になってたじゃないれふか」

「愚痴ってもパンさんは帰ってきまへんよ」


「助けに行くと決まれば、気持ちをそっちに向けてくらはいね」

「パンさんがタルタロスに幽閉されていないことを祈りまひょう」


「もしそんなことになってたら俺たちの旅って無駄なんだよな」


「なんれふか・・・ずいぶん弱気れふな」


「タルタルソースって人間は入れないんだろ?」


「タルタロスです・・・そうなるとゼヌス様でも手が出せましぇんね」


「ああ・・・めちゃ憂鬱になって来た・・・ 」


「そんなことになってないよう祈るのみれふ」


「じゃあ早く行こうぜ」」

「あ〜パンとエッチしてえ・・・」


「こんな時になに言ってるんれふか」


「この話ってエロがないとつまんなくないかなと思って?」


「じゃ〜パンさんを助けに行く前に風俗にでも行ってきまふか?」

「その模様を描写すればエロい小説になりまふよ」


「おまえね、分かってないね」

「俺、女性アレルギーだから・・・風俗のおネエちゃん抱けるわけないだろ」


「お、うっかりしてました、そうれした」

「パンさんしか受け付けないんでしたね」


「だからパンを取り戻さないと俺は一生セックスが出来ないんだよ」

「そんなのEDと同じだよ」


「さ、どうでもいい話はこれくらいにして行きまふよ異世界へ」


「どうでもいいってことはないだろ・・・」


ベンジャミンは健斗を無視してゴミ箱のふたを開けた。


「わ〜臭え・・・しょっぱなからこれか〜」

ゴミはすでに回収車が持って行ってなかったがゴミ袋から漏れた汁が臭いにおいを放っていた。


「ゴミを毛嫌いしちゃいけましぇんよ」

「全部生活ゴミれしょ・・・綺麗な時はお世話になったんれふからね」


「まあ、それはそうだけどな」


たしかに世の中には汚いモノもあるが、作られた時は新品の時があったのだ。

人間の心も同じ・・・生れた時は綺麗だったはずなんだが、みんあ世の中に揉まれて汚れていくのだ。


健斗はちょとだけ反省した。


まずはベンジャミンが杖で結界を解いた。

あまり効き目のない結界ではあったが、ないよりはましだった。


ぽっかり開いた穴から健斗とベンジャミンは異世界へと入っていった。

ベンジャミンがいったとおり穴は人ひとりしか通れなかった。

車なんか通るわけがなかった。


ベンジャミンの持ってる杖の先からでる光がでて暗い異次元トンネルを

照らしていた。

何分も行かないうちに穴の向こうに明かりが見えてきた。


明かりは異世界から来ている光だった。

異次元のトンネルを抜けると、ぱ〜っっとみごとな草原が広がっていて目印の

ように木がぽツンと一本立っていた。

出たところは見渡す限り一面の草原の丘で少し先にはこんもりとした森が見えた。


ふたりは無事異次元トンネルを抜けたのだ。


「ようこそ異世界へ・・・」

「ここはワテが住む森の手前のジュノーネの丘れふ」

「この木は「マイルロヘブンの木」と行ってここが人間界とこの世界を結ぶベスト

な場所なんれふ」

「ワテここからゴミ箱までいきましたからね」


「この世界から人間界へ行くにはそれなりに限られた場所からじゃないと

行けないんれふよ」

「どこでも好きなところから行けるわけじゃないんれふよ」


健斗は異世界の風景を呆然と見つめていた。

美しい草原には綺麗な花が咲き乱れていた。

空の色はオーロラのように虹色に染まって幻想的風景を奏でていた。


「何、この風景・・・岩が空中に浮いてんじゃん」


空中には大小無数の岩が浮いていた。


見渡す限り建物らしきモノはなく、草原の向こうに高い山々があって荒涼と

した光景が広がっていた。

今、ふたりがいる草原の丘から少し先には森が見えた。


「向こうに見える森がニナイの森って言うんれふ」

「まずは森へ行きまひょう」


ふたりは草むらをかき分けて森に向かって進んでいった。

すぐに森の入り口まで着いた時、偶然森の中から誰かがやってきた。


近ずくにつれそれが誰かベンジャミンにはすぐ分かった。

その人はベンジャミンに向かって愛想よく手を振った。


「やあベンジャミン・・・そんな人間みたいな格好してるけどベンジャミンだ・・・あはは変な格好」


「やあ、ピアスさん・・・久しぶりれふね」


「なんでそんな格好してるの?」


「いろいろありまして・・・」

「ピアスさんはここで何してたんれふか?」


「たまたま偶然にね・・・森に住んでる知り合いの妖精に会いに行っててその

帰りだよ」


ピアスと呼ばれたのは女の子の妖精で髪の色が白から毛先に向かってピンク色に変わっていた。

髪は肩までかかっていて、ちゃんとした服を着ていてロシアのウシャーンカみたいな帽子をかぶっていて、そして腰から何かぶら下げていた。

それは悠生君が知ってるオカリナと言う楽器に似ていた。


「あ、紹介しときまひょう・・・こちらは人間で健斗さんって言う人れふ」


「やあ、ケントよろしくね」


「はあ、よろしく」


その子は見た所、まだ子供の女の子のように見えた。


つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る