変わらなかった想い
「葉子、今日も行かないの?」
あれから先生のレッスンを二度も休んだ。そして、今日で三回目。先生には体調を崩したのでしばらく休みたいと嘘をついている。先生に会わなければ乱れた心も落ち着くと思ったから。
「私も葉子と一緒に練習できるのは嬉しいけど、そろそろさ」
「……わかってるよ」
先生の元で練習しない代わりに、千弦たちのバンド練習に参加させてもらっている。もちろん先生の弟である雄介には黙ってもらっている。
「別に行くのも行かないのも葉子の自由だけどさ、この際に伝えて楽になっちゃえば?そしたら、諦めも――」
「……諦めるなんて。そんな簡単じゃない」
「ごめん」
千弦に謝られて、我に返る。自分が思っている以上に心は疲れ切っていた。
「私のほうこそ、ごめんね。……来週のレッスンは行くよ」
そう言うと、千弦は何も言わず私を抱きしめた。
久しぶりに歩くスタジオまでの道のり。初めてスタジオに向かった、あの日と同じように強く鼓動する心臓。スタジオに入り、レッスン部屋の扉を開ける。準備をしていた先生と目が合うが、言葉が喉に詰まって出てこない。目が合って数十秒、先に口を開いたのは先生だった。
「久しぶりだね。体調は大丈夫?」
「はい」
「なら、良かった」
そう言って、優しく微笑む先生。いつもと変わらない笑みに胸がチクリと痛む。私にとっては大きかった三週間でも、先生にとっては変わらない三週間。もっと心配してくれると少しでも期待していた自分が馬鹿みたいに感じる。でも――。
(やっぱり、先生が好きなんだ……)
私の心も何ひとつ変わっていなかった。
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