二
あれは僕がまだ中学生になって間もない頃だったかな。やけに気だるげに感じる平日の日のことでね。その日も変わらず僕は
あの日は確か日光がしつこいほど
僕はいつも
そこまでは普段と同じだったんだけど、学校までの道のりの三分の一くらいまで来た時だったかな。道路の真ん中に何かが落ちていたんだよ。何かが。でも僕、なにぶん目が悪かったからね。そう、今は眼鏡をしているんだけど、この時の僕はそれがカッコ悪いと思っていたとかで眼鏡を持っていなかったんだ。そんなこともあって、そこからでは何が道の真ん中にあるのか分からなかった。
二人はその段階ではまだ気づいていなかったんだろうね、そのまま通り過ぎていったよ。僕も最初はまあいいか、ってそのまま足を進めたんだけど……。でもそういうものってどうしても気になっちゃうものなんだな。だから少し過ぎたところで、二人に一度声をかけてから見に戻ろうとしたんだ。
そしたら二人ともついて来てくれたよ。まあ時間はあったしね。
目的の場所に戻ると、僕は即座に例のものに目を向けたね。何だったのだろう、って。友達を待たせていたし、何より登校の
それは変わらず、ひび割れたアスファルトの上に
遠目に見ると柔らかそうな毛糸の束のようなものでね。初めは編み物か何かかと思ったよ。けど違ったね。徐々に近づいてみると、それが何なのかはっきりしてきた。
ズバリ言うとね、それはキジ柄の子猫だった。
二人はどんな思いで見ていたんだろう。けどねそんなことは目もくれずに僕はその子をそっと手で拾い上げたんだ。
その子の体は今にも潰れてしまいそうな繊細なものだったよ。でもしっかり一つの生き物なのだという
ただそれがもう生命としての活力を失っているのだということも手に取って伝わって来たよ。——重々しくひたすらに冷たい体だった。
そのまま僕は手の中で包み込まれたその子を、そばの植え込みに優しく乗せたんだ。その時、道路の
まあそんなこんなで一仕事終えて、登校の最中であるという意識を思い起こしていたら、一人がこんなことを言ってきたんだ。
「その手、学校に着いたらちゃんと洗えよな」
その発言にもう一人も同調している様子だった。
親切心だったのかもしれない。他意なんてなかったのかもしれない。
だけど僕にはそれが皮肉に聞こえてね。その瞬間にね、僕には怒りとも悲しみともつかない感情が生まれたんだよ。ただその感情の矛先が二人にだけ向いているかどうかは分からなかった。
もう中身のない子猫。少なくとも良いようには思われていない子猫。そんなことを思うと、僕はふと何かを力の限りに殴りつけたい気分になったよ。そして殴っては手を怪我して、猫に注がれる
その時、僕は二人に何も言い返さなかったね。というか「幼馴染」という関係性故に何も言い返せなかった、と言うべきかな。そこからはその話題に触れることはなかった。
これがね、僕の中でいつまでも忘れられずに記憶として残っているんだ。これから先も忘れることはないだろうね。
動物というのは時に奇異な目で見られるんだということを。
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