第8話「整頓」
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積読という言葉は、あまり得意ではない。
本は積むと倒れてしまうからである。
たとえ比喩表現だと分かっていても、せめて整えて置きたいと思ってしまう。
倒れ、床に衝突すると、自然、状態が悪くなる。
別段本を売りに出す際の算用をしているわけではない。
できるだけ本には、傷付いて欲しくないのである。
いや、分かっている。
本は、読めば読むほどに摩耗してゆくものである。
例えば、私の小さな自宅には(一人暮らしをしている)、本で溢れている。そのほとんどが小説である。その中には、私が中学時代に購入した書籍も含まれている。実家から持ってきたのである。その小説は、一見状態こそ悪くはないものの、中を開いてみると、うっすらと汗の跡や、カバーと中の本体がこすれてできた摩擦跡など、色々なところが、古びてしまっている。
そういう劣化は例外である。
それは読むことによってできた
本を大切にしたい。
お前が一体何が言いたいのだと言われれば、それだけなのである。
昨年新しい本棚を購入して、一日、いやさ休日の二日間を利用して、本の整理整頓に充てたことがある。
何かが理路整然と並んでいるだけで、頭の中も整えられた心地になるのは、私だけだろうか。
無論、物理的に積まれているわけではない意味での積読――「書物を買っておいて読んでいないだけ」の本があることは、別に構わないと思う。
本は、そこにそうしてあるだけで良いのだ。
ただ――その舞台は整えておきたい、と思うだけである。
単行本と文庫本の差異があるため、何も考えずに五十音順に陳列すると、凸凹になってしまう。まずそこを分けるところから始める。ノベルスという類のサイズもあるから、これが単純にはいかない。極力シリーズものは、文庫は文庫、ノベルスはノベルスで統一するようにしている。これはポリシーに近いものである。ただ、加筆修正がある場合や、巻末解説を私の好きな作家が担当しているなどという場合は、話が別である。それは別で購入し、差異を堪能する。
そう、堪能。
結局私は、楽しむために本を整頓しているだけなのだ。
いずれは、巨大な書庫のある家に住むことが、私の小さな夢である。
(続)
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