第6話「投稿」

 *


 久々に書いた小説を、公募新人賞に応募した。


 1ヵ月の見直し(校閲や校正と胸を張って言えるほどきちんとしていない我流だけれど)を行った末、さる出版社の公募サイトを見に行った。


 これが存外重要であり、小説の新人賞には、必ずと言って良いほどというものが存在しているのである。


 例えば、原稿の体裁はどうか。基本的に今の時代、小説はパソコンで執筆したものとなる。40文字×30行の賞が多いように思うが、賞ごとにそれは異なる。また、最近はウェブでの応募が主となっている(ように感じる)。特設されたウェブサイトに、データを添付して送るのである。所謂いわゆる就活の書類審査のようなもので、そこに不備があってはいけない――と、私は思っている。就活でも、書類に不備があれば落とされるだろう? それと同じだと思う。私は、そんなところで落ちている場合ではないのである。


 その際の、原稿のファイル形式はどうか。


 私は小説を書き始めてからずっと、執筆の際はMicrosoftのWordを使用しているけれど、PDFに変換しなければならない場合もあるし、あるいはテキスト文書(txt形式)にしている賞もある。個人的には、私はルビと傍点を多用する派の人間なので、WordかPDFだと嬉しい。そうでない場合は、印刷して郵送することにしている。


 あとは、原稿の文字数についてだろう。


 四百字詰め原稿用紙換算枚数で何枚以上何枚以下であったり、規定の形式(例えば40字×30行)で何枚以上何枚以下であったり――それは賞ごとに異なる。いくら素晴らしい小説を擱筆かくひつしたとて、枚数に収まっていなければ、あるいは足りていなければ――それは賞として認められない――と思う。


 先程から「と思う」と言っているのは、別段私がそういうキャラだからとかいうわけではなく、ただ単純に、出版社側の詳しい事情を知らないからである。編集部に勤めているわけでもないし、あくまで私のこれは、記載されている情報から見た憶測でしかないのだ。

 

 他には、応募要項の他の項目について。表紙には規定の項目を記載するだとか、ページノンブルを付けるようにとか、物語の終わりには了のマークを付けるようにするだとか、添付するデータの名前はこうするだとか、賞によって多種多様である。


 それもまた、編集部が選考しやすいようにそうなっているのだろう。毎年大量の小説が応募されるのだ――それらを見、審査し、光る小説を探す。そんな中で、小説の中身以外のところに不備があれば、まず落とされることに違いはないだろう。就活だって同じである。嘘を書けば面接で詰められるし、露呈する、間違えれば「こいつはこういう文書を間違って書く程度の人間なのだな」と判断される。厳しいが、そういう世界である。毎回きちんと二重三重に確認した上で、賞に投稿する。


 勿論もちろん


 小説を投稿する上で一番重要なことは何か? と問われれば、それは「小説を書き終えること」「完成させること」だと、私は言うだろう。きちんと、終わらせること。まさか未完成の原稿を編集部に投稿するわけにもいくまい。それは評価するしない以前の問題である。


 それでも。


 小説を完成させるということは、小説を公募小説に応募することの一要項に過ぎないということを。


 どうか頭に入れておいてほしいものである。


 いや、違うな。


 どちらかというとこれは、私自身に対する注意喚起だ。


 私はこんなところで、つまづくわけにはいかないのである。


 今日もまた、何重にも確認した末、小説を投稿した。


 投稿完了のメールが来て、一安心する。


 発表は半年後、ウェブ上にて行われる。


 良いしらせが来ることを祈って、私はまた、別の公募用小説に取り掛かる。


 作家志望に、休みはないのである。




(続)

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