第22話 サグルとミリアと脳筋『戦士』④
「フッフフ、フフフ、フハ、ハーハッハ!!」
ミリア強化作戦の成功を確信したミリアは笑う。盛大に、滑稽とすら見えるほどに。それもそうだろう、何も知らない者から見れば状況は最悪なのだから。
ミリアの最大の長所である怪力は通用せず、体格差も大きい。更には持っていた得物は破壊され、手にはその柄だけが残っている。
この状況から勝負を優勢にまで運ぶのは至難の技、と考えるのが普通である。
しかし、ミリアたちにとってはここまでは多少の逸脱はあったもののチームSAGURUTVのミリア強化作戦の作戦内には収まっている。つまり、
「ここからが見せ場ですよ~」
ミリアは自身のストレージ内からとあるアイテムを取り出し、壊れた大戦斧の柄に叩きつけるように使用する。すると破壊された大戦斧はみるみる修復、いや、形を変えながらその姿を変えてゆく
「フッフッフ。これがチームSAGURUTVミリアちゃん強化作戦もとい、武器破壊属性を持つモンスターにミリアちゃんの武器を破壊させてワイトキングから手に入れた破壊と新生の宝珠を使って武器を強化使用作戦の真の目的です!!!!」
【説明ありがとう】
【な、なんだってー!!】
【なん、だと……】
【説明乙】
やがて新生した大戦斧が姿を現し、その姿は破壊された柄の部分はそのままに、斧の刃部分と柄で二分割され、更には柄の石突き部にはめ込まれた宝珠からモヤ状の腕が伸びその腕は刃部分を保持しており、なんとも、
「妙な形をしていますね」
が、その形とは裏腹に斧施された装飾は頭蓋骨や骨をモチーフとしておりなんとも禍々しいオーラを放っている。
ミリアは試しに片手でブンブンとその斧を振ってみるが振り心地は今までの大戦斧と大差はない。
「だったらやっぱりこの腕ですよね~」
そう言ってミリアは斧の柄の部分と刃部分を繋げているモヤ状の腕を見る。
【ミリアちゃん危ない!】
「んゆ?」
ミリアは偶然目の端に入ったコメントに気付き
「ヴォモォ!!」
「危な!!」
襲ってきたミノタウロスの攻撃を新たな斧で受ける。
【まだ戦闘中だよミリアちゃん!】
【気を付けないと!!】
【戦いに集中しろ!!】
【えへへ、すみません】
リスナーからの叱責に謝りつつミリアはミノタウロスを見る。作戦は一先ず成功した。しかし、それはあくまでミリアの武器を強化する作戦、未だにミノタウロスはほぼ無傷で健在だ。ならばどうする。
「新しくなった武器の性能を確認しつつミノタウロスさんをやっつけるのみ!!」
故にミリアはミノタウロスに接近し再び攻撃を仕掛ける。今度の狙いはミノタウロスの武器ではなく本体だ。
「りゃ!そりゃ!でりゃ!だりゃ!おりゃ~!」
のべ五回にも及ぶミリアの連続攻撃をミノタウロスはなんとか凌いでみせる。
「う~んこれじゃあさっきまでと殆ど同じですね――なら!!」
ミリアはここで初めて自身の魔力を使用。新武器の柄にはめ込まれた宝珠に自身の魔力を込める。すると、
「おお!回転し始めました」
柄から二分割された斧の刃部分が高速回転。まるで丸鋸のような動きをする。更に、
「魔力を流すのを止めたら回転も停止すると、なら、こうしてみたらどうです?か!!」
言いながらミリアは柄の宝珠から伸びているモヤ状の腕が伸びているところをイメージしながら間合いの外にいるミノタウロスを攻撃してみる。
「ヴォモ!?」
するとミノタウロスに向かってモヤ状の腕が伸び刃部分がミノタウロスに到達。ミノタウロスはなんとか自身の斧でミリアによる一撃を防御する。
「なるほど、なるほど。それじゃあこれとあれを組み合わせたら……」
ミリアは先程の刃の回転と伸縮するモヤ状の腕を組み合わせて、再び間合いの外から攻撃。攻撃されたミノタウロスは今度も自身の得物を使ってミリアの攻撃を防御する。が、回転する刃はミノタウロスの斧と衝突するとギャリギャリと音を立てながらミノタウロスの斧の耐久値を削って行く。
このままでは自身の得物が破壊されると危惧したミノタウロスは半ば無理矢理にミリアの斧を弾き返す。
「おっとと、中々にやりますね。けど――」
この勝負私がもらいました。とミリアは勝ちを確信。自然と武器を握る手に力がこもる。
「それじゃあ、行きますよ!!」
そこからはミリアの一方的な展開が続いた。ミリアがミノタウロスの間合いの外から攻撃を続け、ミノタウロスはその攻撃を迂闊に武器で受けることも出来ないためミリアの攻撃を必死になって避け続ける。しかしながらミリアも攻撃を避け続けられるほど浅慮ではない。しっかりとミノタウロスの回避行動を読んで次の一手、更に次の一手と徐々にミノタウロスを追い詰めて行き、
ギャリンという音と共にミノタウロスの得物が両断される。
「ヴォモ!?」
ミノタウロスは自身の得物を失うも、戦意までは失わない。破壊された斧の柄を投げ捨てるとミリアに向かって徒手空拳のまま最期の突貫を行う。
「敵ながら天晴れ。です」
ミリアは独りごちると自身の得物の回転力を最大まで上げ、最後の一撃をミノタウロス向かって放つ。
その一撃はミノタウロスの胴体を真っ二つに両断。すると同時、ドーム状の結界が破られボス撃破のファンファーレと共にガラスが割れるように崩れ去る。
するとミリアは配信画面に向かってニカッと満面の笑みを見せ、更にはキメポーズまで決める。
「勝ちました!!」
【うおおおおおおおお!!】
【ミリアちゃんスゲー!!!!!】
【カワイー!!!!!】
【ミリアちゃーん!!!!!】
【カッコイー!!!!!】
コメント欄もミリアのことを称賛している。
「えへへへへ、そんなに褒めても何もでませんよ~」
そんなコメントたちにミリアはデレデレに照れている。すると、
「ミリアさん!!」
とチユがミリアのことを心配そうに呼びかけ、呼ばれたミリアは声のする方を向くと、
「ミリアさん!!」
「わぷ!?」
チユがミリアに抱きついてきた。
「ミリアさん大丈夫?怪我はない?ああ、おでこがこんなに腫れてたんこぶが出来てるじゃないの、まったく仕方がなかったとはいえ無理のし過ぎよ」
チユはミリアの体の様子を隅々まで観察。怪我の治療を始める。
「あ、あの、チユさん?」
そんないつもとは違う様子のチユを見て戸惑うミリア。
「何?今怪我を治してるのだから後にして!」
「なんかいつもと違いませんか?」
「何いってるの!私はチームSAGURUTVのヒーラーなのよ。パーティーの子が怪我をしたら治すのは当たり前のことじゃない」
そう言いながらも治癒術式の手は休めないチユ。
「いや、そうですけど」
「だったら黙って治療を受けなさい!!」
「はい!」
【てぇてぇ】
【てぇてぇ】
【てぇてぇ】
【てぇてぇ】
【てぇてぇ】
コメント欄はそんな二人の関係性にてぇてぇの嵐と化している。サグルはそんな二人とコメント欄を見てホッと胸を撫で下ろすのであった。
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