第28.5話 ムード2
「危なかった」
あと少しで、夢葉に手をかけるところだった。
夢葉の体に欲情する所だった。
俺は夢葉を襲うべきだtぅたのか、襲わないべきだったのだろうか。
応えは出ていない。だが、俺はあの瞬間、完全に臆したのだ。夢葉を襲う事を。
とりあえずお風呂に入らなければ。
お風呂に入り、精神を統一させる。
はあ、なんで急に押し倒すなんてことをしたんだろうな。
だが、理由はすぐに分かる。
パジャマ姿の夢葉とのキスで、俺は、俺の体はおかしくなってしまった。
それにだ、それ以前にもおかしかった。
なんだか、自分の体が、自分の物じゃ無いみたいな感覚がしたのだ。
普通に考えればおかしい事だ。俺の体のコントロールは俺自身で持ってなければならない。
だが、性欲は違う。
日々、芸能ニュースで、不倫した芸能人、スポーツ選手が出る。彼らは各々性欲を抑えられなくて、不倫に手を出したりしている。
勿論俺はそんなクズ野郎になるつもりなんてないし、夢葉が俺の彼女だからキスしたというのもある。
それに、元々キス云々は、夢葉から先にしようとしてたし。だが、キスでまさか自分がコントロールできなくなると思っていなかった。
今は夢葉への思いが溢れてしまっている。
ああ、夢葉を誰にも取られなくないなと思う。
夢葉は、自分の体が魅力的なものじゃないと思っているらしい。
多分貧乳云々もそうだし、夢希さんあたりに若干の童顔をネタにされてるんだろう。
だからこそ自信が持てないのだろう。だが、俺に言わせれば夢葉は、夢木さんや柚葉に比べて一番魅力的なのだ。
胸がないとかそんなことはどうでもよく感じるくらいに。
だからこそ、逃げた。こんな邪な気持ちで夢葉にキス以上の事をする訳には行かないのだから。
「後で夢葉に謝らないとな」
きっと彼女はびっくりしているだろう。ムードが出来てたというのに、俺が逃げたのだから。
「それで、あいつが望むなら、その時にカップルらしいことをすればいいさ」
それでいいんだ。
謝って済む問題ではないかもしれないが。
★★★★★
私はそのままその場を動けなかったのです。
私は嫌われたのでしょうか。
分からないままなのです。
俊哉君に話を聞きに行きたいのです。
でも、その時に無視をされたらきっと、立ち直れないのです。
私はどうするべきなのでしょうか。
少し考えても何も答えは出ないのです。
私は面倒くさい女なのです。
ずつと、好きなのに、キスとなると臆してしまうのです。
でも、そんな私にも譲れない一線はあるのです。
俊哉君に嫌われたくはないのです。だって、俊哉君に嫌われてしまったらすべてが終わりなのです。
ここで、効きに行くよりも危機に行かない方が、後悔するのです。私は感覚でそう思うのです。
それに、なんで俊哉君が逃げたのか、その答えが気になるのです。
「よし、決めたのです」
私は俊哉君に逃げ出したわけを聞きに行く。その際に嫌われても、もう仕方がないのです。その時には、私は頑張って俊哉君との絆を取り戻すのです。決意が固まったら、あとは向かうだけなのです。
★★★★★
「俊哉君いいですか?」
お風呂でゆっくりとしていると、そう夢葉の声が聞こえた。
まずい、怒ってるのか?
一気に寒気が俺を襲った。
もしかして、夢葉に許す気なんてないんじゃないか、
そんな恐ろしい妄想が脳内を襲う。
「さっきの事なのですけど」
やっぱりか。
「あれはどういう事だったのです?」
正直に言うべきなのだろうか。
正直に言って、夢葉は俺を嫌わないだろうか。
いや、元々こちらから仕掛けるつもりだった。
だからこそ、これでいいのだ。
「すまん。俺はあの場に夢葉を襲う事を恐れてしまった。こんな、邪な気持ちで、夢葉を襲っていいと思わなかった。謝って済むとは思えないが、俺はテンションに任せて襲いたくなかったんだ」
そう、自身の思いをさらけ出す。
根気も血が夢葉にちゃんと伝わってくれたらいいのだが。
「それは、自身の気持ちが、私とイチャイチャする気持ちじゃなかったってこと……なのですか?」
「いや、そうじゃない。あのまま気持ちのまま襲ってたら、後悔すると思ったんだ。ちゃんときちんとした時に居ちゃラブしたかったんだ。本当に済まない」
「……という事は、俊哉君は私を嫌いになったわけじゃない……のであります?」
「ああ、その通りだ」
そう瞬間、向こうから、バタンと倒れる音がした。
というよりも、へたり込んだの方が正解か?
「良かったのです。本当に良かったのです。私てっきり嫌われたものだと思っていたのです」
「え?」
俺が嫌ってたと思ってたの?
「だって、私のことを急に嫌だと思ったと思ったのです。私が好きにしていいなんて、漫画みたいなセリフを吐いたから嫌いになったものだとばかり」
「俺はむしろ、お前が俺の事を嫌ってたんだと思ってた。だって、俺が逃げたから」
「それは確かにショックだったのです。でも、私としては俊哉君が私のことを嫌った訳じゃないと知ってほっとしたのです」
互いに、自分が嫌われていたと思ったのか。
「夢葉、好きだ」
「うん。私もなのです」
今、俺たちは互いにハグが出来ない。
だが、互いに気持ちが通じ合っていると、俺はそう感じた。
「そうなのです。お風呂の中に入ってもいいですか?」
「は?」
一緒にお風呂?
「あ、中で、二人で話がしたいという事なのです」
「そう言う事か」
理解した。
「分かった」
すると、椅子が運ばれてきて、夢葉がお風呂の中に椅子を用意してきた。
「これで、二人で話せるのです」
「ナイスアイデアだな」
別に夢葉がじろっと見ようとしなければ、お風呂の中にある俺のみられたらじなりゃれは見られることは無い。
「夢葉、お風呂から上がった後、何したい?」
俺はそう聞いた。
先程ムードを台無しにしたのは俺だ。その罪滅ぼし的な事をしたい。
「なら、ベッドで、いえ、言葉にするのはやめておくのです」
なるほど。
「分かった」
夢葉の言いたいことは分かった。
キスよりも上な事をしたいのだろう。
そうなると、言葉が出てこなくなってきた。
今までどうやって会話をしていたのか分からなくなるような感覚がする。
野球の話?
山城選手の同点タイムリーツーベースの話か?
それともマラティス選手のホームランの話か?
分からない。
くそ、なんだか、カップル意識すると、なんだか変な気持ちになってしまう。
てか、夢葉の顔がやっぱり色っぽく見えるんだよな。
キスをしたからなのか、キスをしたからなのか。
ああ、平常心に戻るにはどうしたらいいのだろうか。
分からねえよ。どうしたらいいのか。
「あのさ!」
「あの!」
かぶった。
★★★★★
かぶったのです。
何を話せばいいのかもわからず、俊哉君の顔ばかり見ていたのです。しかし、ようやく話す内容が定まって、話を切り出そうとした矢先にかぶるなんて、想定外なのです。
「俊哉君から、どうぞなのです」
「夢葉から言ってくれ」
「ここは大人しく、話をさせてもらうのです」
ここで、私も譲るのはあまりにもよくない事なのです。
だから私から言おうと決意したのです。
「あの、俊哉君。……普通にしませんか?」
私はそう言ったのです。だって、こんな変な空気なの嫌なのですから。
変にムードとか意識しすぎて、楽しい時間を過ごせない。それが一番嫌なのです。それくらいなら二人で楽しくやりたい。そう思うのは悪い事じゃないと思うのですよ。
……だから。
「俊哉君。普通に話すのです。普通に話して、普通に楽しむのです。それはそれ、これはこれなのです」
「そうだな」
良かったのです。俊哉君も同意してくれたのです。
「一緒に話すのですー!!」
そう言って私は俊哉君の手を握り、上下に振るのです。
「ちなみに、俊哉君は何を言いたかったのです?」
「まあ、大体同じところだ。普通に話したいという気持ちを伝えようとしてたからな」
「なるほどなのです」
私と俊哉君の気持ちは通じているのです。
「じゃあ、今日の試合の振り返りをするのです。今日は、内野安打とはいえ、宇和田選手にプロ初ヒットが生まれたのです。これはめでたい事なのです。これからどんどんとヒットを量産して欲しいと思っているのです。何しろ彼は期待の逸材なのです」
「そうだな。そろそろ下からの突き上げにも期待したいところだ」
「そうなのですよ。私は宇田川選手のことが好きなのですけど、まだまだ現役でやれるとは思ってないのですよ。宇田川選手のことを実力で押しのける若手が必要なのです」
結局、お風呂の中では野球の話を沢山出来たのです。これは嬉しい事なのです。だって、私は野球の話が好きなのですから。
好きな話を好きな人とできる。これほどうれしいことは、他にはないのですよ、
そして、風呂から上がった後、
「俊哉君、パジャマ素敵なのです」
そう、私は俊哉君に対して言うのです。
実にシンプルなパジャマなのですけど、でも、俊哉君が斬ればその魅力は段違いに跳ね上がるのです。
「俊哉君、さあ別途に行くのです」
そう、私は含みのある言い方で言ったのです。できるだけ色気を出すように頑張ったのです。
でも、私自身分かっていないのです。俊哉君と何をしたらいいのか。
でも、それはその場のノリで何とかするのです。
別に俊哉君も鬼じゃないのです。もし私が間違った事を言っても笑って許してくれるのです。
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