第4話
そんなこんなで、ハーピィ…シリィの家に招かれた訳だが…。なんで招かれたか分かってないんだよな。
シリィに訊こうにも言葉が解らないし。
現状じゃデータが少なすぎて、無理をしたとしても翻訳は不可能なんだよな。数日はかかると思う。
脱出手段もないしハーピィの村に住むことになるだろうけど…あっ、そういうことか。
「さっきの会話って、シリィが俺を引き取るっていう内容だったのか」
「ん、ジエハセリ?」
「ああ、気にしないで」
「?」
さて、ここで一旦現状を把握しよう。
なぜ異世界に来てしまったか?これは断定出来ないが、教室前方で見つかったらしいマーカーが原因だろう。俺は実際には見ていないからどんな物かは分からないが、あの光は状況からみて関係してるだろうな。
次だ、あのガーゴイルは何なのか?ガーゴイルといえば魔除けの置物であり、守り神だ。伝承通りならという前提になるが、あの近辺には守るだけの物があるということになる。転移した場所があそこなのは何か理由がありそうだ。
次、逃げたクラスメイト。考えるだけ無駄だな。周囲の環境も分からない以上全て想像…いや、妄想だな。
次、ここがどこか?シリィに連れられて、というか掴まれてここまで来たが、雲より高い位置を飛んでいたせいでどこを通ったのやら。
周囲の風景が変わらなければシリィの速度も分からない。元の位置に戻るには、シリィに連れて行ってもらう以外に無いだろうな。
ここはハーピィの村なのは確かだが、あまり散策できていないから詳しくは分からない。
最後、シリィは何故ハーピィの村に俺を連れてきたのか?これは今一番重要だ。
ただ助けただけなのか?それとも何か俺に求めるものがあるのか?ハーピィ達が何を話し合っていても俺には何も分からない。だからシリィを信用し切れていない部分はある。
なにより間違いなくハーピィの方が俺より強い。
殺す気は無いようだが、ここからずっと出られないのも困りものだ。相手の意思を測る手段が欲しいな。
やっぱり言語は最優先だな。
「こんなところか」
「スカズオビシキヤホィセ?」
「まあ表情を見るくらいしか無いか」
感情表現は人と同じだと仮定しよう。表情で言語取得までの意思疎通を補えるかは不安が残るがしょうがない。
「ミエイマビキカダグネワラ」
いや待て何してるんだ?壁を弄ってる?いやアレはレバー?何故?取り敢えず現在地から移動しておこう。無いとは思うが変な仕掛けで殺されないとは限らない。
「……うわ…」
予想外だ。いや、確かに変な仕掛けはあった。天井が降りてきて謎の管が垂れてくる本当に変な仕掛けが。
え、こいつら腕無いのにホントに変な仕掛け造れるんだ。どういう造りなんだろうか。
「クタ、ユウ」
え、なに、咥えるの?その管。怖いんだけど…
管の数は一本。形状はホースのような…中に物を通すための管としか言いようのない物。見たところ管自体に危険は無さそうだけど、何が出てくるか分からない恐怖がある。
「というか一本ならシリィが咥えて終わりでいいじゃん」
「ホセハ?テテリ?」
「あ~、テテリテテリ」
よく分からないけど、ホセハは私って意味なのは解るから。これは、良いの?って意味だろう。
俺は咥えたくないからどうぞやってくれ。
「ウレズシエ!」
なんか意思疎通も意外と簡単かもな。シリィは特別解りやすい気がする。
あ、結局管から出てきたのは謎のペーストだった。アレがハーピィの食事なんだろう。潰して火を通せば毒でもない限り食べられるしな。
ハーピィは手が無いから直接口に食べ物を送り込んでいるようだ。あれを人がやったら間違いなく気管に詰まるだろう。あと、管が一本なので1人分の食事しか流れてこない。食事の問題はどうにかするとしよう。
管を普段ハーピィが使ってるというのも、変な菌の繁殖してる可能性があって恐い。
降りてきた天井はレバー操作で戻っていった。ホントにどういう造りなんだ…。
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