クラス召喚で初日にいなくなった俺だが、誰か覚えているだろうか

永準

第1話

「ちょっ、なんでこんなことになってんの!?」

「知らねぇよ!とにかく逃げろ!」

「どこに!」

「とにかくまっすぐ!!」

ちっ、なんで初っ端から追われなきゃいけないんだ!相手はガーゴイルか?見た感じじゃ数は2体。俺の体力じゃこのまま逃げ切るのは難しいか?相手が飛んでいる以上撒くのは無理だろう。安全地帯の場所も分からない。万事休すだな…。

「しょうがないか」

俺が囮になって引き付けて、あとの奴らが安全地帯にたどり着き、助けを呼んでくれるのを期待するのが一番可能性が高いだろう。気付いてくれれば。

俺は他の奴らより一番遅れているからな。逆走時に邪魔にはならないだろう。

「行くか!」

俺は逆走する。ガーゴイルもどきの化け物に向かって…。

「5分保てばいいなぁ」




発端は数分前まで遡る。

「俺は英語は駄目なんだよ…」

誰に言うでもなく独り言を呟く。

俺の名前は舞鳥優まいどりゆう。高校2年生。特に取り柄は無いが欠点は幾らでもある普通の男子生徒だ。まあぼっちの自覚はある。

「おい、なんだこれ?」

「なんかちょっと変わってるけどマーカーだろ」

誰とも話していないと周りの奴らの話しはよく聞こえてくる。

「掃除場所白板の人だれだっけ」

「悠人と川崎と…まあそのへん」

「陸はいま居ないか…悠人これなんか分かるか?」

「ん?知らん。何それ」

というか随分と大きな声だな。なんだ?そんな珍しいものでもあったのか?

「だからマーカーだろって、書いてみろよ」

「いや書いて消せなかったらどうするんだよ」

「油性じゃなきゃいける」

「これ何性よ」

「書いてないん?」

「英語っぽいけど読めん」

「お~い、リナ居ない?」

「山口ならなんか男子と集まってる」

「ん、なにしてるの」

「ああ、なんか久城くんが変なの見つけたみたい」

なんか随分集まってるな…どんなものなんだ?

俺が立ち上がったときだった。教室前方白板前から強い光が発生した。

「なっ!?」

「おい、志藤なにしたんだよ!」

「いやちょっと手に書いてみただけだって!」

これヤバくないか…逃げよう。

しかし逃げることは叶わず。俺含めその時教室にいた役10名はこの日、異世界へと送られることになった。午前11時頃のことだった。



「ここはどこだ…?」

「分かんない」

「見た限りじゃ森だけど…」

「森ってどこのだよ」

「これって…今流行りの異世界転移ってやつなんじゃ…」

「異世界…?まさか」

「おい志藤、お前のせいか?」

「ちがっ、あれは総司が見つけた変なマーカーのせいだろ!」

「はあ!?お前が勝手に使ったせいだろ!」

「待って!!まだそのマーカーのせいって決まったわけじゃないじゃん、それに異世界なんかじゃないかもじゃん」

いや、あれは光の発生源的にマーカーのせいだろ

「とりあえず、こういう時は点呼だ。今誰がいる?出席番号早い順から並んでくれ」

「1番、赤瀬美奈あかせみないます」

「えっ、まじで点呼とるの?」

「2番、伊藤颯也いとうそうやいます」

「えーっと、私違うクラスなんだけど…」

お前ら呑気だな…、いやむしろ混乱してるのか?

「もう点呼あんまり意味ないだろ。大体の数だけ数えよう」

「2、4、6、8、10、12人だと思う」

「半数以上居ないのか…、いや、巻き込まれないで良かったというところか」

俺は巻き込まれてるぞ…。

「ここに居ても仕方ないよ、まずは森を抜けよう」

「いや、こういう時は救助を待った方が…」

「救助が本当に来るって言い切れる?どこかも分からないのに。まずはここがどこか把握すべきでしょ」

「どこかも分からないからこそ下手に動かない方が良いんだ」

ガサガザッ

ん、なんだ?

…そこには悪魔を模したような石像が宙を舞う姿があった。

「それじゃいつまでここに居なきゃいけないかわからないじゃん!」

「なあ2人とも…」

「なんっ…だ?」

「ちょっとあれヤバいでしょ」

ああ、割とマジでヤバそうだ

「みんな逃げろ!!」

「ちくしょう、いまので完全に気づかれたじゃねぇか!!」



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