第52話 死に戻らないその後 2
会場となる大広間につくと、そこにはすでに多くの貴族が集まっており、広間正面にある巨大なテーブルには、こぼれ落ちそうなくらい大量のプレゼントが置かれていた。
「凄いね、あれ全部ライザ王女殿下へのプレゼント?」
「そうだな。今回は、王女殿下の婚約者を選ぶという噂も流れているし、王家に取り入りたい貴族達が大勢いるんだろう。プラタニア貴族だけではなく、他国からも縁談を望む声が多く上がっていると聞く」
戦争に勝ち、さらには塩の利権まで手に入れたプラタニア王家に取り入りたい人間は多数いるだろう。きっと夜会でも、ライザの気を引こうと多くの男達が彼女に殺到することだろう。
「なんか、大変そうだね」
「サミュエル殿下がうまくさばくだろう」
元は人見知りで引きこもり気味な王女だと聞くが、ルチアをノイアーから引き離そうと、あんなに大胆なことまでできたのだから、やればできる女性なんだろう。なにより、いつまでもノイアーに懸想されていては困るから、ルチア的にはライザには早く結婚を決めて欲しいところである。
しばらくすると、大広間に銅鑼の音が鳴り響き、大扉が開いてサミュエルにエスコートされ、真紅のドレスを着たライザが現れた。その姿はゴージャスの一言で、広間にいた人達は皆見惚れるばかりだった。
「本日は、妹ライザの誕生日を共に祝ってくれて感謝に堪えない。ライザの二十歳の誕生日と、皆の健勝を願って乾杯したいと思う。乾杯」
サミュエルがライザを伴い壇上に上がり、簡単な挨拶と共に乾杯する。ライザからも一言あるかと思いきや、特に何も言う事なく二人は壇上から降り、ライザを祝う貴族達に囲まれて見えなくなってしまう。
「お祝いに行かないとですよね」
「いや、別に今じゃなくてもかまわないだろ。まずは腹ごしらえでもするか」
「それいいね!行こう行こう」
今ならば誰もがライザに群がっているから、ビュッフェはガラ空きの筈!ルチアは思う存分人目を気にせずに食べられるんじゃないかと、浮かれ気味に大広間を出て、ビュッフェのある小広間へ向かった。廊下は正面門の大渋滞で入場が遅れた貴族達が大広間に向かっており、小広間に向かう人間はルチア達以外にいなかった。小広間につくと、想像通りに人っ子一人おらず、給仕の侍従が数名いるだけだった。横長の大テーブルには、前菜多数に魚料理に肉料理、デザートまで山盛り状態。どれをとっても美味しそうで、他の貴族がこないうちに、全種類コンプリートしたい!と、ルチアはさっそく皿をとってがっつり肉から乗せていった。
「ルチア、この肉も美味そうだぞ」
一応盛り付けを美しく、若干のせ過ぎてしまいましたわ……を装って、貴族令嬢が食べるだろう量の数倍多く盛り付けたルチアの皿に、ノイアーが豪快に肉料理を追加でのせる。
貴族令嬢らしくないと眉をひそめることなく、ルチアの食欲を肯定してくれるノイアーって最高!……なんて思いながらモリモリ食べていた時、侍従が一人小広間に入って来た。
「エムナール伯爵、サミュエル第二王子殿下がお呼びです」
「サミュエル殿下が?」
「はい、先だっての戦の敗残兵について、至急エムナール伯爵にお話することがあるとか」
それって、今話さなければならないこと?という疑問と共に、こんな時にわざわざ呼び出す程、緊急な出来事が起こったとも捉えられた。
「しかし、今は……」
ノイアーは、ルチアを一人にしてしまうことを懸念しているようだった。
「私はここで待っているから大丈夫。ここからは出ないわ」
ルチアは、心配いらないとノイアーの背中を押す。ここなら混雑する大広間と違って、人がほぼいないから変にからまれることもないだろうし、死角になる場所もないから、連れ込まれる心配もない。何かあれば、侍従に助けを求めればいいだけだ。
「そうか?じゃあ、なるべく早く戻ってくるから」
「うん、待ってる」
ノイアーは侍従の後について広間を出て行った。それから、ルチアはノイアーに言ったことを守り、小広間を出ることなく、食事やデザートを堪能した。
夜会も中盤を過ぎ、小広間にも食事をする為に人が流れてきた頃、それなりに小腹もたまったルチアは、壁際に設置してあった立食用のテーブルに陣取り、果実水を飲みながら、次に出てくるデザートはなんだろうとデザートのエリアを眺めていた。
そんなルチアの視界の端を、キラキラした金髪の美青年が横切った。
(第二王子殿下?)
ノイアーを呼び出した筈のサミュエルが、何故かデザートを堪能していた。ルチアはテーブルを離れ、サミュエルの元へ行った。サミュエルの周りには着飾った令嬢達がたむろしていたが、身体の小さなルチアはうまいこと令嬢達をすり抜けてサミュエルに近付いた。
「第二王子殿下」
「あれ、ルチアちゃん。大広間にいないと思ったら、こっちにいたんだ。君を振り回しながら踊るノイアーのダンスが見れるかと、楽しみにしていたのに」
「私だってノイアーとダンスしたいですよ。で、ノイアーはまだ軍の用事で戻れませんか?」
「軍の用事?」
きょとん顔のサミュエルに、ルチアの頭の中に「?」が飛び交う。
「えーと、軍事秘密みたいな感じですか?人前では話せない的な」
その割には、ノイアーを呼びに来た侍従は、周りの耳を気にせず話していたけれど……。
「何を言ってるんだい?」
「ですから、第二王子殿下がノイアーを呼び出したんですよね?先の戦の件で、至急話があるからって」
「先の戦って、砂漠の民との戦のこと?別に事後処理もスムーズに終わっているし、今更なんの話もないけど」
サミュエルの言葉に、ルチアは表情を固くした。つまり、サミュエルはノイアーを呼び出してなんかいないと言っているからだ。
「ノイアーは、第二王子殿下に呼び出されて出て行きました」
「僕は呼び出してなんか……。それ、いつの話?」
「一時間と少し前くらいです」
サミュエルは手に持っていた皿を近くの令嬢に渡した。
「ごめんね、これ片付けておいてもらえる?ルチアちゃん、行くよ」
サミュエルは足早に、ルチアは小走りに小広間を後にした。
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