塩と砂糖10
チュン、と手元を熱が掠めた。やられた。ククリナイフを手にした人影に気を取られて、手元を撃たれた。弾は貫通。鋭い痛みと熱が血潮と共に流れ落ちる。腕を伝う液体の感触に、持っていた銃を取り零しそうになる。
「おい、まさか手をやられたのか?」
ソルトが切羽詰まった声で叫んだ。見ると銃を捨ててナイフでククリナイフに応戦している。被った黒いフードから覗く髪は赤く、長い。体格は華奢。女か?それとも華奢な体格の少年だろうか。
「全く冗談みてえなヘマやらかすな。片手で撃てるか?」
「嗚呼、問題ない。他をやられなければ──」
その瞬間、チュン、と再び弾が頬を掠めた。俺は服の袖を口で裂き、傷を負った右手に巻き付ける。ある程度止血をしたところで、再び銃を構えた。
「そっちはやれそうか!?」
「当たり前。接近戦じゃお前よりつえーの。」
「任せた、俺は雑魚を何とかする。」
タン、タン、と再び銃声が響く。先ずは厄介な援護射撃を何とかしなければならない。ソルトの方はと言うと、時折聞こえる斬撃の金属音から何とか応戦している様だった。
このままではククリナイフに手間取られているソルトに弾が当たり兼ねない。俺は暗闇の中に視線を凝らし、狙いを定めて発砲した。今度の狙いは足ではない。首と胸だ。ソルトの銃が無い以上、此方で致命傷を負わせるしか手はない。
7、6、5……動く人影が少なくなっていくのを確認しながら、引き金を引く。狙撃の腕があって良かったと改めて思った。
「ヒュー、助かるぜ、相棒!」
粗方動きは封じただろうか。残る人影はククリナイフの人物だけになると、俺はその手元に銃口を向けた。素早い。下手をするとソルトまで巻き込んでしまう。
「そろそろ降参しねえ?」
長丁場になってきた応戦から見るに、相手は相当の手練だろう。ソルトが押すものの、その度に躱して間合いを取ってから再び襲いかかっている。小柄な体格故の素早さと身のこなしだろうか。
「やだ」
初めて件の人物が言葉を発した。声は若い。中性的な……少年、だろうか。
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