第三話 賢者の記憶に秘められた真実
「ここは、どこだ?」
見えるのは、混沌とした暗闇。パニック状態になるかと思ったが、なぜか心地いい。
「俺は一体、誰なんだ。」
今まで、忘れていたものがたくさんあった。でも、それでも、その忘れていたものが本当だったのか、信頼できなくなる。
「いや、俺は、俺なんだ。それはいつになっても変わらん。」
その忘れていたものを見つけるために、俺は混沌とした闇をかき分け、その記憶をたどる。
――――――
2024年 日本
――――――
俺、
古今東西の戦略や戦術、さらには現代の軍事技術や国家安全保障まで、幅広く網羅している。まるで、戦場での決断や戦略が自分の手の中にあるように感じるほどだ。
しかし、この世界では
「防衛医科大学はぜったいダメよ!」
この始末。まったく、俺の言い分を聞かず、それを反対する理由を並べてくる。
「賢、あなたは人を救う道を選ぶべきよ。軍事なんて、命を奪うこともあるし、戦争は人の心を壊すの。あなたがどんなに戦術や戦略に詳しくても、それが平和につながるわけじゃない。戦争に携わるなんて、母親としては到底受け入れられないわ。私はあなたがもっと穏やかな道を選んでほしいの。」
担任の先生が気まずそうな顔をしてる。まずいな。母の怒りを鎮静化しないと。
「母さん、落ち着いて。母さんがここで頭に血が上っても、何も話が進まないよ。」
母はそんなことも聞かずに網反論する。火に油を注いじゃったな。収まるどころか、激しくなってきた。
いろいろ言い合ってしまったが、結局、先生に止められ懇談は後日することになった。はじめて、担任に助けられたかもしれない。
小声で、
「ありがとう、先生。」
と感謝を述べる。
母がこんなに俺の将来を心配するのは理由がある。それは、俺の過去、いじめにあっていたことが起因している。
確か、俺が高2のとき、いつものように孫氏の兵法書を休憩時間読んでいた時だった。
クラスの陽キャ軍団が俺に絡み、本を奪い取りからかってきた。奴らは一回だけではとどまらず、その後何十回もいじめを仕掛けてきた。
例えば、本を燃やしたり、俺のみんなにバレないように隠していたチェスボードがバレ、勝手に隠されたりした。
今思い出しても、頭痛がするほど腹が立つ。
そして、最後は全部先生に見られて、この一件は落着したかと思われてたが、グループの中の八神陽斗が将棋をしようと勝負を仕掛けてきた。俺のことが腹に立ったんだろう。
結果は、圧勝。俺が強すぎた。序盤は相手も考えていたので、均衡していたが、相手の角と飛車を取った瞬間相手はバラバラになり、王を潰した。これこそ、it`s piece of cake ってやつだった。
勝った瞬間、脳汁が出すぎて死ぬかと思った。いじめのせいで人間不信に陥ったこともあったが、復讐の気持ちよさだけは人間不信がちっぽけに見えるくらいよかった。
夕日が沈みかけ、あたりが暗く、懇談後の高校からの帰り道のこと。俺の好きな妹の声が聞こえた。
「にいにいー!待って」
全力で走ってこちらへ向かってくる。こいつが俺の妹の
「お兄ちゃん、そういえば、懇談どうだった?」
「母さんが俺の防衛医科大学をダメ出ししたせいで、もうめちゃくちゃだ。」
舞は分かりきった感じだ。修羅場になるのは予想できてたのか…俺には母さんが応援してくれてると、てっきり思っていたんだがな。
「やっぱり。で、お兄ちゃんはこれからどうするつもりなの?」
そう言われたら、自分の考えを貫くしかない。
「変えずに、防衛医科大学目指すよ。その後はまぁ自衛官かな。」
妹は顔をプクっとふくらませ、
「ちょっとはママのことも考えなよ~」
ほんと、家族想いなやつだなと思った。その想いを俺のために使ってほしいぜ。
まったく、ちょっとはその天然要素がいい方向に向かえばなと思うぜ。
「おい、今日、チェスやらないか?」
「えー、お兄ちゃんとやっても絶対勝てないよ!」
やっぱり、妹と話すのは楽しい。これまで普段の俺は別に友達を特別作ることも絡むこともない。そんな俺でも、家族は大好きだ。不安とか気にしてたものが、話すと安心するんだ。
母とは今日、口論になったが、母が嫌いとかじゃない。あ、でも直してほしい、ところはあるけど。でも、愛してて、幸せなのは変わらない。
そう考えるとなんだが、あったかい幸福を感じた。
「お兄ちゃん、何ぼーっとしてんの?早く横断歩道わたるよ。」
「あー、ごめん。ちょっと考え事してた。」
すると、妹は意地悪そうな顔で、
「え?お兄ちゃんが考え事?お兄ちゃんって、そんな馬鹿だったんだぁ(笑)」
くっそ生意気だった。前言撤回。やっぱ嫌い。
でも、自然と俺もクスクスと笑える。やっぱりこれが好きだ。
「そこの車、止まれぇぇぇ!!!!!」
唐突に、雷が落ちたかのような、通行人の悲鳴と叫び声が飛んできた。
左の方を見ると、軽トラが止まることなく、妹の直前まで高速で走っていた。
「おいおいおいおい!」
俺は咄嗟に妹を横断歩道から歩道に押し倒した。
まずい、このままだと妹に当たる!
逃げろ!速く!たとえ、俺がぶつかったとしても!
「やばい、逃げろ!!!!!」
最速で妹を押し倒したものの、俺も妹も軽トラに轢かれてしまった。
――――――――――――
冥界 魂の間
――――――――――――
意識がはっきりしない。あのあと、どうなったのか…
そして、ここがどこなのか分からないが、なぜが何も感じない。というか、体がないというのだろうか?
臨死体験でもなさそうなこの感覚。不思議だ。肉体がなく、魂だけなのか体がまったく動かない。
どれくらい待ったのか分からないが、急に誰かの声が魂に刻まれる。
声はおじさんというよりおじいちゃんだった。
内容はぼやけてイマイチ分からなかったが、「異界」「アビリティ」 「転生」という単語だけは分かった。
時間の感覚が感じられない中、俺の意識は眠りにつくように落ちていった。
――――――
そうか、そうか、すべて思い出した。
「賢もロンも全部俺だったんだな…」
なんでこんな重要なことを忘れたんだろう。これは自責の念に潰されそうだ。
「くっそ、俺は一回死んだんだな。」
俺は自我が芽生えたときから、前世の記憶をほんとにぼんやり持っていた。それを考えると賢の記憶も納得がいく。
妹を死なせてしまったやるせなさを今感じる。あの時。もしおれがあの時。ぼーっとせず、さっさと横断歩道を渡っていれば―
俺は、感情でいっぱいになり、なにも言葉がでなかった。
「おい、こんなところで何をへこたれている!」
知らない声…って俺の声じゃねぇか?これ?
その声の方向を見ると、あのとき夢でみたやつ、いや見た目は俺か。
そいつは目に光は無く、漆黒の闇に包まれていた。
「だから、忘れるなとあれほど言っただろう!」
「忘れるな?俺の忘れたあの記憶とことか?」
「それじゃない!アビリティのことだ。」
は?いきなり何を言い出したかと思えば、アビリティだと?
「いや俺のアビリティは『???』だぞ!使えるわけ、」
口を挟むように奴が、
「アビリティの名前は魂に刻まれている!」
魂?そうか、そうだったのか!あのジジイがこの世界の人の魂にアビリティを刻んでいるんだ。俺が魂として聞いたのも確かに「アビリティ」だった。
「しかし、アビリティは名前を知らないと使えないんじゃ…」
そう。名前を言えないと発動は難しい。それがアビリティそのものを使ったことのない奴にとっては不可能。
「馬鹿か!!魂に刻まれてるのだ!忘れる、忘れないの問題ではない!お前は自分に不信を抱きすぎだ!」
「でも…」
そんなものできるわけないだろう。
その時、奴は激怒し、俺の手を掴んだ。
「ええい!もう限界だ!」
「
俺はまたもや、意識を失った。
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