第3話

「じゃあまずは作戦会議から」

「おう」

僕と彼女は互いに感情をぶつけるように渾身の力で手を叩き合わせた。


「まず大前提として今日寝た場合は私は玲くんはカフェで出会う所から始まるの。それからは玲くんが知ってる通りの展開」

「つまりSynthetic(シンセイティカ)から今晩逃げ切る。そうすれば11月24日を迎えれるということか…」

「まあ…それが本当に難しいんだけどね…。4回も試しているけど突破口が見つからないの…」

「……」


彼女は深刻な顔をしてそういった。まあ冷静に考えてみれば銃を持った複数の集団から逃げ切るなんてそうたいそうなことを1人の少女ができるわけない。


「早めに避難するとかは…」

「それもとっくに試した。だけど戦場に棒立ちになって殺されるだけなの、。」

「……」


俺は自分なりに何かいい案がないかと脳みそを絞りこみ必死に考えた。そして俺はある事を疑問に思った。


「寝ないで乗り切るっていう選択肢はないんですか?」

そう冬華さんに提案したら彼女はパッと閃いた表情で僕を見つめた。

「盲点だったかも…。それは試したことなかった。」

「試しみる価値はありそうじゃないですか?」


そう彼に目を合わせて言った。少しズルい気もするが、試してみる価値は充分にありそうだ。

今夜はその作戦を実行しようと2人は決意した。

そうゆう事なので俺と彼女はコンビニに立ち寄る。


「これでいいかな」


コンビニに立ち寄った理由は睡眠対策ようのグッズを買う事にした。


「玲くんは今夜は私の家で過ごしてほしい。もしどっちかが寝てとっちかが起きていたらどうなるか分からないし」

「うん、お互いに頑張ろう」


時刻は21時に回った。そして俺は冬華さんに家にお邪魔している。彼女の部屋は漫画の下書きや、作品などがいろいろあってとにかく素人の目から見てすごいという感想しか持てなかった。


「頑張ってるんですね」

「まあ」

「そういえば親はいないんですか?」

「実は私1人暮らしなんだ。親は栃木にいる。」

「そうなんですね」


彼はずっと紙と睨めっこをしている。漫画を書いていたのだ。そして俺はこんな事を聞いてみた。


「漫画…よかったら見せてくれませんか?」

「え…どうして?」

「実は俺も昔絵を少しだけ書いてて…ちょっとだけならアドバイスはできるかと」

「……」

彼女は考え込むような顔をして、10秒後、選択を決めたようなパッとしたような表情をした。

「分かった…いいよ」


了承を頂き、漫画を拝見した。その漫画はとてもあつかった。いや、あつく感じたと言った方が正しい。

漫画を読んでいるときその作者はというと、何もせず緊張している様子も見えた。人に見せた事があまりないのだろうか。

そして作品を読み終わらせた。


「……面白い。おもしろいよ。これはいける…」

「え?」

「物語も抜け目がなくて安心して楽しめる。絵も細かくて世界観がしっかり見えてくるし、最後は泣きそうなる程キャラ1つ1つの個性が出てた。」


時刻は10時30分。本気を出せば1巻1分で読み上げる僕もさすがに1時間以上かかってしまった。それはこの漫画の良さに浸り、感情移入したのもある。それぐらい彼女の作品は賞賛されるべき作品だったのだ。


「あり、ありがとう。人にこんな事言われたの初めて。だ、だから本当にありがとう。

そう感謝を読者に伝える彼女はほっぺを赤くし、その瞳からはきれいな水が流れ出していた。


「え、なんで?」

「いや、気にしないで」


彼は手で涙を拭きとり泣いていることを必死にごまかしたが、それがわざとすぎて少し笑えてくる。


「でも冬華さんに足りない事は自信かな。」

「なにそれ」

「自分に自信を持てば、もっといい作品が書けると思うよ。絵もうまいし、ストーリーを考えるのも上手いんだから」


こんな素人が何言ってるんだ。でもその言葉が少しでも彼女の役に立てば読者からしてはそれで満足だ。


「そろそろ23時だね。大丈夫。一緒に頑張ろう玲くん。」

「もちろんです」

一つ疑問が浮かんだ。


『この1か月間23時以降まで起きたことはなかったっけ』と、

俺はその疑問だけを残したあの世界に行った。



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リセット・リミット 時空を越えし者、現実を繋ぐ鍵 伊集 ひろ @soaked

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