第22話 岩の霊らしい
「どうも失礼をした」
どこかからか声がした。耳の辺りの空間から聞こえてきた、そんな感じだった。初老の男性の声に似ている。
「いささか年甲斐もなく心穏やかでないことがありましてな。ところでそなたらは」
「私は」
お能登さま、まったく驚く様子もなく日付から出席番号で指名されることがあらかじめ分かっていた数学の授業みたいな受け答えをし始める。現状はまさに出所の知れないテレパシー状態である。よって俺には単に幽霊がしゃべっているようにしか聞こえない。つまりは恐怖だ。状況が分かっているお能登さまにまずはご説明を願い出る。
「さきほどの岩の霊だ」
考えないことにした。その言葉のまんま受け入れようと。なるほどお能登さまによって冷静に戻された岩の霊がしゃべりかけているわけね。亀の姿では出てこないんだ、あの鳥みたいに。よって岩の霊様とお能登さまの会話に割って入ることはしないでおこう。
「能登と申します」
から始まり、鳥の所でもした自己紹介と鎖骨の印を見せ。で、本題に入る。
「ということがありまして、その卵が頂にあると聞き及び」
亀、もとい岩の霊は相槌を打ってそのまま寝入るんじゃないかの間合いであったが、
「確かに。返すに忍びないがこの老いぼれの願いを一つ聞き入れてはくれまいか。さすれば返そうではないか」
自分の宝でもないのに出し渋った挙句に、要求を突き付けて来るとは。エロ要求だったらお能登さまの操は俺が守らねばならん。
「このところ人が多くやって来てな。作法を心得ぬ者たちが踏み荒らし、ゴミを捨て、草花を取り、まずもって敬意を抱かぬ。寛容な心とて忍べどもいたるところに歪みが出る。ほれ通行止めになっているのもそうだ。こらえていても身震いが小石を転がしてしまう。人にとっては危ういらしい。今回のように住まいから身が剥がれてしまうかもしれん。そこでせめて我が心の安寧と場の浄化と保護をしてもらいたいのだ」
それなら市役所とかシルバー人材センターに言うと派遣してくれそうだな。
「そういうことではない。人の手に施せることではないのだ」
どこか苦々しい表情で俺を訂正してくれて、
「とはいえ私は島の外の者。勝手をしてはならないはず」
困ったように岩の霊にご相談するお能登さま。
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