切り札は最後までのこす物
「まさか今のを避けるなんてやるね?びっくりしたよ」
宗田が笑いながら言った。
だが笑ってるのは顔だけで、その声の奥からは笑いという感情が見つからない。
何を考えているのか、よく分からなくて気味が悪い。
「まあな。子供の頃から普通の生活を送ってきてないせいか、人の悪意とかそういうのには死ぬほど敏感なんだよね」
俺はそれとなく返し、自分の心情を相手に探られないようにする。
今感情を探られて俺がもしビビってるなんてことがバレたら……時間稼ぎもできずに無駄死にか……それだけは絶対に避けなきゃならない、せめて他の人に伝えないと……
あ、そうだ無線で伝えりゃあいいじゃん、何で忘れてたんだろ。
無線機に手を伸ばして、喜早達に伝えようとするが
――何故かそこにあったはずの無線機がない。
「あれあれあれあれ?」
俺はポケットの中などを探してみるが、どこにもない。
「もしかしてこれのことかい?」
声がした方を向くと、そこには無線機を手に持っている宗田の姿があった。
「は?お前がそれ何で持ってるんだよ……?」
「あぁさっき避けたときに落としたみたいだね。それで?この無線機で何をしようとしてたんだい?」
くっそ気づかなかった……やべぇ何とかしてごまかさねぇと今何をされるか分かったもんじゃねぇよ……
せめて喜早達には伝えないと……
とはいってもどうやって無線機を取り戻す?とりあえず時間稼ぎでもしてなにか策を考えないとな……
「いや別に?ただ無線機が故障してないか確かめただけだよ。とりあえずその無線機返してくれない?それ俺のだろ?」
とりあえず当たり障りのないことでも言って時間稼がないと……
「ねぇ鰯田くん僕は今何をしてるか聞いたんだよ?別に嘘をつけなんて言ってないんだ、というわけで嘘をついたバツとしてこの無線機は破壊させてもらうよ」
そう言ってニコニコした顔で無線機を踏み潰す。
うわぁサイコパスやん。ていうかそれよりもだ……なんで今の発言が嘘だってバレたんだ?顔には出てなかったはずなんだけど……
俺は思考を必死に巡らせ、なぜ自分の発言の中に嘘があるとバレたのかを探る。
そして俺は一つの答えにたどり着く。
そうだった思い出した……確か宗田の
「どうしたんだい?顔色が悪そうだけど?」
クソがあいつ分かってていってんだろ?
まぁでも今の状況に関してはあいつのほうが圧倒的に有利、勝ちを革新するには完璧な状態と言えるだろう。
だが、簡単に諦めるほど俺も腐っちゃいねぇんだなこれが。
それに加えて、あの余裕ぶった表情。
「マジでイラッときたぜ?やってやるよ、ぜってぇお前をここで倒してやる」
策がないわけじゃない……何ならもう手は打ってある。
だが、成功するにはまだ時間がかかる。最低でもあと10分は稼がねぇと……
まぁやるしかねぇか。
そのためには宗田の意識をこっちに集中させるしかねぇ……
俺だけで倒せるならそれに越したことはねぇんだ、策はあくまで策。ぜってぇに勝てる理由にはならない。
切り札は最後まで残しておくから効果が発揮される。
自分の手で倒せるなら倒したい。だったら一対一に持ち込まねぇとな……
「なぁ宗田、このままやっていてもお前もつまんねーだろ?だからよぉゲームをしねぇか?」
できるだけ挑発しろ……頭を使え……
「僕が何でそんなことをしないといけないんだ?ましてや僕はもう勝ってるんだ。そんな無意味な勝負に乗る必要はない」
宗田が木刀をこっちに向けてそう言ってきた。
どうやら俺の話に全く興味がないらしい。だが俺はそんなのお構いなしに煽っていく。
「おいおいもしかして、こんな圧倒的な状況から負けるのが怖いのかよ……はぁ情けねぇなそれでも男か……?」
その言葉を言った瞬間だった、宗田の眉が少しピクリと動く。
今の発言に反応した?これが宗田の弱点か?
「何だって?僕が君に負ける?寝言は寝て言ってくれ、今の状況から負けるって言いたいのか?」
宗田が声に怒りの感情を載せ始める。
「じゃあ何で俺の勝負に乗らねぇんだ?絶対に勝てるなら完膚なきまでに勝ってみせろよ?それかやっぱり負けるのが怖いから、俺の勝負に乗らねぇのか?」
宗田の顔に少しずつ怒りの感情が現れ始めた。
「僕が君みたいなやつを怖がっているだって……?いいよ、そこまで言うなら僕もその勝負に乗ってあげるよ、勝負ってのは何をするんだい?」
かかった。
やっぱり宗田は俺みたいな自分より劣ってるやつに色々言われるのが、相当効くらしいな。
だったら次はこう言えば、うまく乗ってくるはず。
「そうだな、お前の得意分野でいいぞ?」
するとその言葉を聞いた瞬間に、宗田の顔に完全に怒りが浮かび上がってきた。
「何だって……君ごときが僕に得意分野でかかってこいって言ったのかい?そう言ったのかい?君ごときが、君ごときが?いいだろう君には、君より優秀な人間がいくらでもいるということを教えてあげるよ。」
「そうだな勝負は剣道でどうだい?僕の得意分野なんだよね」
こりゃあ完全に引っかかったな、こうなりゃああとは時間が立つのを待つだけだな。
「あぁいいぜ剣道だな?ルールはどうする?相手が気絶したらにするか?」
「それで構わないよ、さぁ君も剣を取りたまえ役職の能力で出せるのだろう?」
そういやぁ裏切り者の能力ってなんなんだ?全く分からねぇ……
――まぁ今はそんなことどうでもいいか、目の前の勝負に集中しねぇと負けたりでもしたら切り札が役に立たねぇ。
「ああいいぜ、どうやって始める?」
俺は能力で木刀を取り出したあと、そう宗田に伝えた。
「そうだな、じゃあこれから落ちている落ち葉を上に投げる、それが落ちたらはじめにしないか?」
そう言って宗田は落ち葉を拾い上げる。
「いいぜじゃあ早速始めようじゃねぇの」
俺の言葉を聞いた瞬間に宗田は落ち葉を上に投げる。
ひらひらと漂いながら、落ち葉は重力によって落ちていく。
手に汗が滲み、落ち葉の周りはだんだんと緊迫した空気になっていく。
”パサッ”という音とともに落ち葉が地面につく。
その瞬間に、二人の男は一斉に飛び出した。
”カンッ”という音とともに木刀同士がぶつかる。
それがこの試験最後の勝負が始まる合図だった。
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