第48話 お金を使う究極の目的

「パパのお話をいままで聞いてきて、お金を使うことも大切で難しいことだと感じたよ」


 カノは、真面目な顔になって言った。


「自分にはできないことにお金を出して誰かにやってもらうということは、基本的なことなのだろうね」


 ハルは、お金の使い方の基本をつぶやく。


「そうだね。自分の時間をいかに望むように過ごすかが、人生ではとても大切なことだ。さっきも話したとおり、人生という時間には残念ながら限りがあるからね」


「望むように過ごすために、お金を上手に使うのね」


 カノが、確認する。


「自分が苦手なことは、お金を使って済ませるのも有効なわけだ。時間の節約になるし、苦手なことをしないから、ストレスも溜まらないだろう」


「うーん。でもそれでいいのかな? 苦手なこともなんとか上手になった方が、できることが増えるし良いのかなとも思うよ」


 ハルは、疑問を提示する。


「そうだよね。逆上がりができないと……恥ずかしいから。一所懸命、練習したもん」


「少し大げさかもしれないけど、社会で生きていくために、知識やスキルを身につけることはとても大事。特に学校で習うことは、みんなができた方が良いことを教えてくれるからね。逆上がりだって、コツをつかめば出来るようになっただろう。それで、自分の身体の動かし方を学べるわけだね」


「じゃ、苦手なことはお金で済ませてしまうのって、やっぱり良くないのでは?」


「世の中はとても広くて、様々なことがある。すべてのことを自分一人でできるわけではないよ。自分が苦手なことは、無理せずに、それが得意な人に気持ちよく助けてもらうこと。社会に出ると、世の中にはたくさんの役割があることを知ると思う。学校での係や委員会なんかは、かわいいものだよ。得意な人に助けてもらえば、自分は楽だし、その人も得意で好きなことで、お金を得られる。お互いハッピーだろう」


「それはそうだよね。自分が苦手なところを助けてもらえるのは、ほんとにありがたいよ。お兄ちゃんに、算数教えてもらうのとかね」


 カノは、頼りになるお兄ちゃんを見つめて言った。


「『苦手なことは、お金を使って済ませる』というのは、お金を使う究極の目的のひとつだろうね」


「苦手なことでイヤな気分にならないために、お金を使って助けてもらうこともありなんだね。うーん、もうちょっと大人になったら、わかるのかなぁ」


 ハルは、少しだけ首を傾げて述べる。


「まぁ、今は良くわからなくても、お金についてこれからも観察していけばわかってくると思うよ」


「他にもお金を使う目的ってあるのかな?」


 カノが、聞いた。


「もう二人は理解していると思うけど、『生活に必要なものをそろえるために、お金を使う』わけだよね」


「あ、そうだったねー。生きていくために必要なものを、お金と交換することで手に入れていかないといけないのだったわ」


「『投資』と『消費』の考え方も大事だったよね」


「見方を変えることで、お金の使い方は『投資』にも『消費』にもなり得る。ムダづかいにならないように、お金を役立たせて使うことだね。生きていく上で必要なものを手に入れるために、お金を使う。逆にいうと必要でないものには、お金は使わない方が良いということでもある。お金はエネルギーだからね。効率よく使うという点が大事なんだね」


「本当は欲しくないものだったり、必要ないものだったりを買ってしまうのは、エネルギーのムダということね」


「でも、生活に必要なくても、自分の好きなものは欲しくなるよね。ぼくの場合は、ゲームだけど……」


「楽しい時間を過ごすために、お金を使うのは決して間違いではないよ。旅行なんかは、わかりやすいだろう。お金を使ってしまうけど、普段行かないところへ出かけて美しい景色を観たり、美味しいものを食べたりする。それは自分の人生という時間を有意義に過ごす方法の一つだと思う。ただし、お金を使わなくても、楽しい時間を過ごすこともできる。パパなんかは、小さかった二人を連れて、公園で遊ぶのも、とても楽しかったよ」


「つまり……楽しい時間を過ごすことはとても大切で、お金を使って楽しめるものもあるし、使わなくても楽しめるものもあるのね」


 カノが、整理する。


「お金を使って楽しめることと、お金を使わなくても楽しめること、自分の中ではっきりさせておくと良さそうだなぁ」


「そのとおり。お金を使わなくても、楽しめることはたくさんあるだろう。ストレスが溜まったからといって、衝動買いをして発散させるのではなく、散歩やジョギングをして発散させても良いのだからね。ポイントは、お金を使う時に、その目的を確認すること。なぜ、今これを買わないといけないのか? 買わない場合は、どうなるのか? 買わなくても、なんとかならないか? といったことを考えることがコツだ。迷った時は、買わずに何日も考えてみるのもありだ。売り場から離れたら、欲しくなくなる……なんてこともあるからね。欲しいと思ったことすら、忘れてしまうなんてこともある」


 パパは、二人に心構えを説いた。


「お金の上手な使い方はマスターしたいなぁ。だって、お金は時間の結晶。大事に使いたいわ」


「考えずにお金を使ってしまうことをさけるのが、重要そうだ」

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