脚本

そして獣になった【完結済】

そして獣になった 1/4

主要人物


佐複志斬さふくしざん(19)男。

羽愛はあい(19)女


以下本文

◇◇◇

 

〇定食屋


 皿が割れる音が聞こえる。

 長谷川(19)目をつぶる。

 ヤギ獣人(48)、長谷川を見て、怒鳴る。


ヤギ獣人「お前! 何度言ったらわかるんだ!」


 ヤギ獣人の声が響く。

 佐複志斬さふくしざん(19)、様子を見ている。


長谷川「す、すみません。」

ヤギ獣人「これで何度目かな、長谷川くん。もういい。クビね」

長谷川「待ってください! クビだけは勘弁してください!」


 長谷川はヤギ獣人のツノを掴む。


ヤギ獣人「いいか人間! ここは元々、獣人だけしか、働けないところだったんだよ! だがな、法律によって、ここも人間雇わなきゃいけなくなった! つまり、お前は邪魔なんだよ!」


 ヤギ獣人、机を強く叩く。


長谷川「邪魔……そんな言い方しなくても」

ヤギ獣人「事実を言っているだけだ! それともなんだ? 獣人差別するのか」


 戸惑う長谷川。なにも言えない。

 その空気を打破するように、佐復さふくが立ち上がる。ヤギ獣人の肩を叩く。


佐復さふく「なぁ店長、ちょっといいか?」

ヤギ獣人「なんだ人間、言ってみろ」

佐復さふく「てめえの方が、邪魔なんだよ!」


 佐復さふく、獣人に向かって唐突に殴りかかる。  


長谷川「佐複さふくさん。なにしているんです!」

佐複さふく「見りゃわかるだろ! 獣人コイツが嫌いだから、殴った。それだけだ!」


ヤギ獣人「なに言っているんだ。俺はまとものことしか言ってないぞ。これだから人間は……」

佐複さふく「なんとでも言え、俺は獣人差別主義者じゅうじんさべつしゅぎしゃだからな。お前ら獣人を見るだけでイライラする」


ヤギ獣人「おーそうか、だったらお前もクビだ。さっさと俺の前から、ででけ!」

佐複さふく「そのつもりだ、長谷川さん、帰るぞ」

長谷川「え? わ、わかりました」


 二人は店から去る。


ヤギ獣人「薄汚い種族め」

羊獣人女「八木やぎさん大変でしたね」

ヤギ獣人「あぁ小さい頃、差別されたことを思い出したよ。四十五年前以上はアニエンスが珍しかったからな」

羊獣人女「でも十五年前にアニエンス愛護法の法律ができたじゃない」

ヤギ獣人「それでも、俺みたいな獣人は嫌いな人いるよ。さっきのバイトのように」



 〇定食屋 外


佐複さふく「大丈夫だったか?」

長谷川「まあなんとかね」

佐複さふく「よかった、やっぱり人間を差別する獣人はクソだな」

長谷川「ほんとですね。全員が全員そうじゃないけど」


佐複さふく「いや全員そうだろ? あの獣臭い人間もどき共」

長谷川「……そ、そうなんだ」

佐複さふく「だけど、人間は素晴らしい。アイツらとは違って差別はしないし、頭脳も優れて、まさに完璧な存在さ」

長谷川「でも佐複さんは差別してますよね。矛盾しているのでは」


佐複さふく「俺は優れている人種だからいいんだよ! もしかして長谷川さんも獣人に肩を持つつもりか?」

長谷川「そういうつもりじゃ……」


佐複さふく「だよな〜。それじゃ俺は飯食っていくわ。またいつか会おう」


 佐複さふく、手を軽く振りながらその場を去る。


長谷川(……僕も悪いところあったけど、ああいう人にはなりたくないな……)



 〇都内 昼


 どこもかしこも、獣人だらけでイライラしている佐複さふく


佐複さふく(どこ見渡してもエセ人間ばかりだ。反吐がでる)


 嫌な表情しながら、飯屋を探す佐複さふく。突如女の子の声が聞こえる。


羽愛はあい「シザーン殿の空腹時に失礼します〜」

佐複さふく「……はぁ、何かと思ったらお前かよ。羽愛はあい


   羽愛はあい(19)、口角を上げている。腕を上げて話しかける。

 

羽愛はあい「はーい、羽愛はあいちゃんでーす。天使のはねあいと書いて羽愛はあいだよー」

佐複さふく「なんともお前らしい挨拶だな」

羽愛はあい「でしょでしょ! この挨拶考えるのにどれだけ時間をかけたか」

佐複さふく「考えることはいいことだが、俺は飯を食いたいんだ。お前も探してくれ」

羽愛はあい「オーケー、なに食べたいの?」

佐複さふく「今は牛丼や安い寿司がいいな。できれば獣人が多いファミレスの選択肢は除いてくれ、あそこは獣臭くて飯が不味くなる」

羽愛はあい「えー、私ファミレスがいい〜。獣人多くてもいいじゃん」

佐複さふく「うるせぇ! あいつらがいるだけでイライラするんだよ! 人間専用の店にしてくれ」


 羽愛はあい、大きな声をあげながら、駄々をこねる。


羽愛はあい「いやだ、いやだ! ファミレスがいい! 牛丼美味しくない〜!」


 子供のように叫ぶ羽愛はあい。街の人たちは彼女を見る。


獣人モブ「げ、変なやつ」

獣人子供「ママ〜、あのひとなにしているの?」

獣人子供の母「しぃー、見ちゃいけません」

人間モブ「一人で叫んでて気持ちが悪い……」


 羽愛はあいのことを、冷ややかな目で見る街の人。

 佐複さふく、身動きが取れないほど恥ずかしがる。


佐複さふく「おいおい、もう恥ずかしいからやめろよ……。ファミレスでいいからさ」

羽愛はあい「……ほんと? んじゃ早速いきましょう!」


 羽愛はあい、佐複をひっぱってファミレスに連れて行く。


佐複さふく「ちょ! やめ……、う、動けない……」


 彼を抑えたままファミレスにつく。



〇ファミレス・店内


 佐複さふく達、中に入り、席に座る。

 四人テーブル席に案内される佐復さふく

 佐復さふく、左に座る。

 羽愛はあい、佐複の隣に座る。


佐複さふく「なんで俺の横に座るんだよ! 空いている右の席に座れよ!」

羽愛はあい「いいじゃないの、どうしようと私の勝手でしょう。てかここしか座れないし」

佐複さふく「……ここしか座れない? 目は節穴か?」

羽愛はあい「その節穴な私でも愛おしいでしょー? 羽愛の愛はいとおしいの、愛だもの」

佐複さふく「相変わらず意味のわからないこと言うな……。もういい飯食おうぜ、飯」


 佐復さふく、メニュー表を開き、羽愛はあいと一緒に料理を見る。

 ハンバーグ、ドリア、パスタなど色とりどりの料理が目に移る。


佐複さふく「うーん迷うな……。羽愛は何か決まったか……」


 羽愛はあい、唐突に注文ベルを鳴らし、店員を呼ぶ。

 佐復さふく、驚く。

 人間の店員がやってくる。メニューを開いて話す。


羽愛はあい「すみませーん。注文いいですか? この野菜たっぷりハンバーグとほうれん草のドリア。ごはん大盛りにセットでカスタードケーキください!」


 羽愛はあい佐複さふくの確認も取らず、勝手に注文する。

 店員、うなずく。


店員「わかりました、ご注文を繰り返し伝えます」

佐複さふく「おい! 待てよ! 俺の注文がまだだぞ! この大きいミートボール入りミートパスタください!」


 店員、佐複さふくの言葉が聞こえないのか、注文を聞かない。


佐複さふく「おーい、聞こえてますか? 俺はミートパスタが……」

店員「……セットのカスタードケーキ。以上でよろしいですか?」


 佐複さふく、注文されてない事に焦る。

 羽愛はあいに頼んでみる佐復さふく


佐複さふく「す、すまない、羽愛。俺の代わりに注文を頼んでくれるか?」

羽愛はあい「別にいいけど条件がある、私にミートボール分けてくれたらね」

佐複さふく「ああ、何個でもあげるからやってくれ!」

店員「……どうかしましたか?」

羽愛はあい「いえなにも、追加でミートパスタもお願いします」

店員「わかりました。追加でミートパスタですね」


 店員は追加料理を言い、厨房に向かう。


佐複さふく「ふー助かった。ありがとうな」

羽愛はあい「はーい、どうも。さっきの約束忘れないでね」

佐複さふく「わかったわかった」


 佐復さふく、辺りを見渡す。

 獣人たちが楽しそうに食べているのを見て、少し態度を変える。


佐複さふく「やっぱり獣人は臭くてたまらんわ、ちゃんと風呂に入れよ」

羽愛はあい「……どうしてシーザン殿は獣人が嫌いなの?」

佐複さふく「まあ、子供の頃、獣人にいじめられたのもあるけど……あのときお前が支えてくれたから」


  ×  ×  ×


○小学校・夕方


 猫の獣人達が佐復さふく(7)をいじめている。

 佐復さふくを蹴り飛ばす猫の獣人。


猫の獣人A「人間のくせに弱いな。てっきり猿だと思ったよ」

猫の獣人B「きゃはははは、お前、猿だってよ」

猫の獣人C「猿は猿らしく、木登りしてろ」


 その場から去る猫の獣人。

 佐復さふく、涙を流す。


佐復さふく「……悔しいよお」


 そのとき、羽愛はあい(7)が現れる。


羽愛はあい「大丈夫?」

佐復さふく「……誰?」

羽愛はあい「私は羽愛はあい。あなたを守りに来たの」


  ×  ×  ×



佐復さふく「獣人は、単純に人を見下している態度が、気に入らないんだよ。アイツらが悪いのに無視されるのも嫌だね」

羽愛はあい「ふうん、かわいそうに」

佐複さふく「だろ? だから嫌いなんだ。いつも殴りたいなと思っているよ」

羽愛はあい「まあ殴りたくもなるよね」


 アゴに手を置く羽愛はあい


羽愛はあい「そうだ!」


 大きく声を出し、提案をする。


羽愛はあい「そんなに獣人が嫌いなら、いい考えあるよ」

佐複さふく「いい考え……?」


羽愛はあい「それはね……獣人を撲滅することだよ」


 羽愛はあい、不気味な笑みを浮かべる。

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