【完結】イピトAIは仮想空間をイネーブルする~未確認AIに高校生活を乗っ取られたら、もふもふワンコが助けに来てくれました。なぜか美少女アサシンに好かれてます~
Episode10 パッチワークのテディ・ベア
Chapter 3 美少女アサシンは母の味と共に
Episode10 パッチワークのテディ・ベア
横ではココアが幸せそうに眠っている。
くぷくぷと寝息を立てているのに癒され、頭をひと撫でした。
『misora』に潜り、レベルを上げては酒場に行く。
例の二人組に話しかけては、レベルが足りないとパーティを組むのを断られた。
「今日もレベルがたりないって言われた」
「もう、話しかけなくて良いんじゃないかな」
フィールドからの帰り酒場に向かうが、いつもうなだれて二人は酒場を出てくる。
全くストーリーが進む気配がない。焦りを覚えた。
ココアはふわふわな綿毛を
シアンに現実の生活を乗っ取られたままの
ノアとイネーブルできる時間は限られている。
趣味のパッチワークをしようにも、裁縫道具が家に置いてあり取りに行く事もできない。
勉強に関してはノアが午前中一杯、ガッチリという感じで家庭教師をしてくれている。
これと言っいてやることにない昼下がりは暇なのだ。
このように手持ち無沙汰だと、いろいろ考えて思考の迷路にはまってしまう。
「学校、行きたいなぁ。いっくんにも逢いたい」
一人では無いのがせめてもの救いである。
ノアも気に掛けてくれるし、
フルダイブ中はココアと留守番をしている状態だ。
何もしないのは落ち着かないからと言い、食事当番を引き受けてくれいる。
主菜とご飯、お味噌汁の家庭的な和食が基本で、みんなが大好きな唐揚げやハンバーグ、昨日は酢豚だった。
そしてお味噌汁は、格別に
「ねぇ、
雫月は何でも無いことのように答える。
「
そのどの料理も
それが嬉しくて思い出すと少々にやけてしまうのだが、こんなことではキモイと言われてしまいそうだ。
気を付けなくては。
その上、掃除とココアの世話も焼いてくれる。
組織に居た頃も、ココアの世話は
ココアが優しい良い子に育ったのは、
気になることがある。
誰もいないダイニングを抜け、
直ぐにドアが開く。
ドアの隙間から見えた
ベッドには寝袋が畳んで置いてある。
窓にはグレーのブラインドが掛けてあった。
それ以外は何もない。必要最低限以下ではないかと思う。
ここは仮住まいであると語っているようだった。
まだ
黙り込む
「
「あのさ、―――
すみれ色の瞳に
その表情も仕草も、穏やかさがある。
鋭い眼光の暗殺者と同一人物と思えない。
「えっ? 窓の事? 敵から丸見えだと困るでしょう? ブラインドなら開けても中が見えないの。本当はカーテンが好きよ。でも、嗜好品である布製品は、……愛着が湧くし、―――私にはもったいない」
組織では、自分の好きなものなど持てなかったのだ。
服は作業着のようなものが支給されるだけだし、
「あのね。収容施設に居た私たちには、布さへも自由には手に入らなかったの。それでもね、
「お母さん? パッチワークしていたの?」
「うん、他にもいろいろ手作りしてたよ。刺繍とかもしてた」
実は
設計図を考え、こつこつこつこつと丁寧に縫い上げ、アイロンを当てる。
手間暇をかけて、丁寧に縫えば縫うほど、角がキレに出て模様がハッキリする。
それが、とても快感なのだ。
最近は、マルチカバーなどの大作もつくるようになってきている。
趣味が手芸の
「ご飯は食べられたの?」
「蒼井博士と
服もカーテンも決して嗜好品では無い。
誰でも持っているし、好きなものを選べるはずだ。
いつか、当たり前に好きなものを選べるようになってほしい。
真剣に考えこんでいる
知り合ったばかりの男子が自分の部屋に訪ねて来て、部屋の前で黙り込んでいる。
まず、同世代の男子の知り合いが居ないので当然かもしれない。
目は泳いでいるし、足は後ろに下がりたそうにソワソワしている。
「あ、あの。何か用があって来たの? どうしたの?」
そうだった。
それについて
あの夜、
それは、シアンに生活を乗っ取られた事に係わりがあるのではないかと思う。
「あの時の暴漢は、シアンの手先だと思う?」
小首を傾け、頬に手を当てる。
何かを考えるときの彼女の癖なのだろう。
「とりあえず、お茶をいれるわ」
---続く---
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