無銘の鬼
くうき
第一部:日常編
プロローグ:死んだ、そして生まれ変わった。
何事もほどほどが良いと、誰かが言っていた気がした。しかし、そんな人生にはならなかった。
人を殺して、殺して、殺して、殺して………まだ生きていてもおかしくない命さえも奪いつくして、気が付けば様々な蔑称がつけられていた。解せぬ。仕舞にゃ地獄の閻魔様呼ばわりだ。時代柄仕方ないが、流石に地獄の王と称するほど肝は太くないんだよ。生憎様だが。
しかし、生まれて98年も生きた。自分の身体は思っているより動かなくなっている。多分寿命なんだろう、そう決めつけた。
足利、三好、織田、明智、豊臣、徳川と天下は変遷してきた(明智と三好はまぁ短いモノでしたね。豊臣の栄華も今宵終わることが分かっていた。同時に自分の命は終わるのだ。天下を治めた世界を全て見てきた。甘いところも苦いところも全てのみ込んで気が付けば老いぼれになっていた。
名前なんて残せないものと考えていた。だが、欲が生まれた。一兵として生涯を終えるのでなく、ひっそりと後世に残る名前になるならば何でもいいと。
後世では大坂夏の陣と呼ばれるものに徳川、豊臣に着かず、ただ駆けまわった。幼子のように山を駆け抜け、童心を思い出すように笑顔が抜けなかった。楽しかった。何よりも楽しい時間だった。
神にすら奪われたくないと思った。走った、斬った、走った、斬った、跳んだ、斬った。同じような繰返しでも、無駄のない動きで人たちで楽に命を狩り獲った。
しかし、時間は有限だった。悠久に感じた今この瞬間は一瞬の夢の間にあった走馬灯だった。ボロボロになった着流しに、皺だらけになった身体、衰えた筋肉と、視力はより霞み、衰えが顕著になっていた。自分の状態を客観視した瞬間、ふと力が抜け落ちていった。
命よ持ってくれ、まだ足りない。遊び足りない!!叫ぶように悲鳴を上げ続ける体と心を立ち上がらせる。最期九百九十九の首を切り落とし、最後赤く染まった甲冑の小柄な男とやり合った。
湧き上がる興奮を抑えながら一合、二合と打ち合いは激しくなっていく。相手の方も、満身創痍でありながら死力を尽くしてくれた。
残り火は微かに消えかかっていたものがこの瞬間だけ息を吹き返し、輝きを増させ、首を目掛けて刃を薙ぎ払う。届き、命は狩り獲れた。
だが、眠いな。どうやらここまでのようだ。自分の命は思ったよりも長くしぶとくなのに短く感じるほどに濃密な人生だったのだな。
無明齋と呼ばれる傭兵は大坂夏の陣にて徳川豊臣の兵千の首を獲り老衰にて死去。享年九十八
なんて、思っていたのだが。
「何故か、新たな人生を歩んでいるんだよな。解せぬ。」
俺、無明齋改めシグは再び生を受けた。鬼神として。いやぁ、何故生まれ変わったんだろうか。本物の閻魔さんからは神様の不始末だからと言うことで、刀を貰い静かな陸の孤島に転生することになった。
赤ん坊で。正直、何度も死を覚悟した。まず食糧問題に入った。乳が無く、流動性のある食事が無く、まずそこで死にかけた。流石に、神に苦情を申し出た。その次に、衣服。あの野郎、身一つで俺のことを異世界に飛ばした。満零歳の俺を殺すとしか思えない所業だった。家も無かった。造れと言われた。流石に許せなかったので、情で訴えまくって神に造ってもらった。
これを未来ではご都合主義と言うらしい。らいとのべる?とか言う少し、春画(今の時代で言うとエロ本)が少し入り混じった文章に書いてあったことを覚えている。
後は、はーれむ?まぁ、一夫多妻とかだが。だが、愛する人などは一人でいいと思うがなぁ。
話が逸れた。苦情の話だったな。他にも有るにはあるのだが、正直埃を叩けば出るように、不満も大量に生まれたので、追々話していこうと思う。
そこから、なんやかんやあって十八年もの時を過ごし、ある程度の力を得ながら、農業、林業、漁業、鍛冶、家事、畜産、錬金術、魔術等々を嗜みながら隠居生活を謳歌していた。
後は、最後に首を獲った少年………いや少女であるユキと夫婦になった。彼女は、男と偽り戦場を駆け抜け、後世では真田幸村として名を馳せていたことが分かった。一方で、俺の名前は後世に残ることは無かったらしい。現実は首千個分でもダメなものらしい。
「ユキ、お前は後悔していないのか?」
「後悔ねぇ、しないわよ。あの戦が無ければ私は、埋もれた灯のまんま死んでましたもの。それに、私は今、幸せなんですよ。女として偽らずに生きることが出来ることにもう満足しているのです。」
「そうか。なら、俺も励めるように尽くしていきたいと思う。着いてきてくれ、ユキ。」
「喜んで。地獄の果てでもついていきます。シグ様。」
妻は、器量よしの美丈夫だった。身長は無いけど、ついでに胸も無いけど。
………やべ、心読まれた。逃げなきゃ(使命感)
結果は、察してくれ。もう、限界だ。
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スローライフになるかもしれない異世界コメディかもしれない何かです。呼んでくれると嬉しいです。
のんびり書きますね。
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